SABAすたいる

スイスのくらし、旅のエッセイ、日々のできごと、おもうこと。

旅のトラブルで心がけていること。むじゃきに希望を伝えてみる。

XX行き、XXX便は欠航いたします。

内容とはうらはらに、なんとも優雅でピースフルなアナウンス!

理由も謝罪もなく、事実をつたえるだけ。こういう場合のアナウンス方法として、しっかりマニュアル化されているのだろう。乗客の怒りや不安をあおらないため、冷静に行動してもらうため。

四月末の関東地方に強風が吹き荒れた日。私たちは、スイスに帰国するため、羽田空港にいた。

出国エリアで搭乗待ちをして3時間以上。遅延しますというアナウンスは何度もあったけれど、理由の説明は一切なく、まさか欠航するとまでおもっていなかったのでびっくりした。

ヨーロッパからの到着便が、強風のため羽田に着陸できず、成田空港に到着。機体のやりくりがつかず欠航、となったらしい。

出国中止のスタンプをもらい、チェックインしたスーツケースを再びピックアップし、再予約のため航空会社のカウンターにできた長蛇の列にならぶ。

こうなったら2時間、3時間は当たり前、ただひたすら待つしかない。

途中、声をあらげて係員につめよっている男性がひとり。なにか切羽詰まった事情でもあるのかもしれないけれど、こういう時、怒って事態が好転したというはなしは聞いたためしがない。

でもだからといって、おとなしくしているばかりがいいわけじゃない、というのが難しいところ。

だいたい、わたしたち日本人は、自己主張が苦手だ。なので、こういう時には、おとなしく黙っている派が大多数だと思うがどうだろう?もしくは、いきすぎてクレイマーとかモンスターなんとか、みたいなことになってしまうか。。

で、いつも思うのは、こんな時、スマートに自己主張できたらなぁ、ということだ。

自慢にもならないが、私、空港でのトラブルによく巻き込まれる。思い出したくもない経験のかずかずではあるけれど、学ぶべきことは多々あって。

心がけているのは、どんなときにもまず「むじゃきに希望を伝えてみること」だ。

と言ってみたものの、言うは易し。

3時間並んで、ようやくカウンターにたどり着いた私たち。用意されたホテルがあまりに遠くて不便な場所だったので、なんとしても他のホテルを手配しなおしてほしかったのだけれど、私、この心がけをすっかり忘れてしまった。

「えー(不満そうに)もっと近いところないんですか?」

「あいにく、提携しているホテルはどこも満室になっておりまして」

「他に選択肢ないんですか?」

「申し訳ありませんが、これしかありません」

「うーん、遠すぎるんですよねぇ」

不毛な押し問答がえんえんつづくのを、となりで見かねた夫がひとこと。

「XXホテルに宿泊したいんだけど、確認してもらえますか」

すると、さっきまで1ミリも進展しなかったはなしが、

「マネージャーに確認します」

と、トントン拍子に展開し、あっという間に空港直結のXXホテル宿泊をゲット。

さらに、

「夕食の手配もお願いできますか」

というと、六千円分のお食事券まで、でてきたのである。

この違いはなに?

オジさんたるもの、威厳がちがう?マイレージのステイタス?チケットのクラス?いや、威厳もステイタスもクラスも、そんなことは最初からわかっていたはず。

けっきょく、じっさいのところ何が決め手になったのかは、確かめる術がないのだけれど、、

ひとつ言えるのは、私が「相手の案に対して、不満をあらわしていた」だけだったのに対し、夫は「相手の案はおいといて、具体的にこうしてほしいと自分の希望を伝えていた」つまり、こちらから逆提案していたということだ。

相手の提案に対してイエスノーで話が終始しているうちは、交渉の主導権はにぎれない。自分が提案することで、交渉の主導権をにぎることができるのである。まさに交渉術の基本のキ。

などというと大げさだけど、じつはこれが「むじゃきに希望を伝える」ことの極意であり、「スマートに自己主張する方法」にもなるというわけ。

ささいなことから、大胆なことまで。「どうせ無理」とか「図々しいかな」とか余計なことを考えすぎずに、むじゃきにぽんっと「〜したいな」といってみるだけなのでカンタン。それに、文句をいったり、クレームをつけたりするより、だんぜん平和的でエレガントにみえるというメリットもある。

たとえば、チェックインぎりぎりだったが、ダメもとで「通路側がいいんですけど」といってみたら、通路側は満席ですがとアップグレードしてもらったこともあるし、ウチの母など、PRADAのミラノ本店で、バッグを値引きしてもらったこともある。

気に入って、購入しようとしたバッグに小さな傷があって、現品のみだったのでひとこと「割引きしてくれたらうれしいんだけど」とニッコリしてみただけ。

あんまり無謀な要求をしたり、しつこく食い下がったりする客は、もちろん困りモノだけれど、具体的な要望がない、もしくは、はっきりしないお客が軽くみられるのはたしか。

客としてちゃんとした扱いをしてもらうためにも、スマートな自己主張は必要だ。スマートに自己主張して、スマートな客に。

むじゃきに希望を伝えてみる。こんどこそ忘れないようにしよう。

The sky is the limit.