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SABAすたいる

スイスのくらし、旅のエッセイ、日々のできごと、おもうこと。

英語の恥はかき捨て。”Don't be shy”で行こう。

ひさびさに友人A(スイス人。会話は英語)とお茶した。いつもはカジュアル一辺倒なAが、きれいなベビーブルーのタンクワンピに、グレージュがかったエナメルのハイヒールサンダルで登場したので、

「わぁ、今日はChicじゃん。このあと予定でも?」

と、冷やかしながらほめたつもりが、なんだか微妙な表情。

「今なんて言った?」

と聞き返された。

「だから、Chicだねって」

「もしかしてChic(おしゃれ)って言ってくれてるつもり?」

「うん」

というと、Aはふき出した。

「SABAの発音だと、Sick(病気)だね、に聞こえる」

と。

涙目になりながら、ちがいをなんども発音してみせてくれたが、悲しいかな、わたしの日本語耳にはどちらも「シック」としか聞こえない。

このように、こちらはちょっとした違いと思っていても、発音の違いでとんでもない意味になってしまう例はたくさんある。

Can I sit here?(ここに座ってもいいですか?)を、Can I shit here? と発音してしまうと、ここにウンチしてもいいですか?になってしまう、とか。Goat(やぎ)とGout(痛風)、Election(選挙)と Erection(勃起)などなど挙げればきりがない。

外国語を上達したければ、Don't be shy! (恥ずかしがらないで)とよく言われるけれど、こんな間違いをすれば、恥ずかしいものは恥ずかしいわけで、用心にこしたことはない。

その点、よく言われるように、国際結婚(恋愛)はいい。基本的に、相手は自分に好意を持ってくれている(はず)なので、まちがっていても何とか理解しようとしてくれるし、笑ってバカにしたりもしない(はず)ので、思う存分まちがえられる。

わが夫(スイス人)も、他のことには必ずしも寛容ではない性格ながら、わたしの英語に対してはとても寛大だ。

「イカ(Squid)が庭の木にいた」と言っても、「次の墓場(Cemetery)は九月から始まる」と言っても、理解しようと最大限努力してくれる。--> 正解はリス(Squirrel)、学期(Semester)です。

新婚当初、会議に遅れそうといそぐ夫に「私のことは気にせず行って」と言いたくて、Leave me alone(ほっといて!)と言ったときは、さすがに動揺していたけど。。

これがビジネスイングリッシュだったら、ビジネスが成り立たないところだが、結婚生活はなりたつのだからありがたいものである。

ところで、間違いのなかで個人的にもっとも厄介だと思うのが「聞き間違い」である。いったん、聞き間違えて、誤解したまま話をすすめると、とんでもない袋小路にはまりこんでしまうことがあるからだ。

とくに、大人数でのディナーでの会話。少人数なら聞き直したりして、確認できるものも、大人数だといちいち会話をストップするわけにもいかず、質問や話題を100%理解しないままに発言することになる。

先日も、親戚のP君とSちゃんがニューヨークから遊びにきて、親戚一同でディナーをしたときのこと。苦手なアメリカ英語、しかも、二人ともまだ若いのでとにかく早口だ。

大学生のSちゃんが皆に聞いた。

「もし、有名人とディナーできるとしたら、誰としたい?」

P君は、名前は忘れたが、有名な映画監督の名前をあげた。彼はスクリーンライターの学校に通っていて、映画の脚本家になるのが夢なので、みな「なるほど」とうなずいた。

Sちゃんは、国際通貨基金IMF)理事のクリスティーヌ・ラガルド、と言う。世界トップクラスの女性リーダーにして、ファッションセンスも抜群。さすがキャリア志向のSちゃんが憧れるのも無理はない。

Christine Lagarde - enquête sur la femme la plus puissante du monde

と、いい具合に盛り上がってきたところで、SABAは?と私の番がまわってきた。

こういう時、外国人相手に日本の有名人を言っても、会話が盛り上がらないので、無理くり海外セレブの名前をひねり出さなければならないのも厄介なものであるが、しかたなく、

ダニエル・クレイグ

といった。ご存知、ジェームズ・ボンド、007である。

「なんで???」(全員口をそろえて)

「クールだし、セクシーだし、マッチョだし」

「そうだけど、だからってなんでー?」

と、クスクス笑いが止まらない。ディナーデートの相手に、ダニエル・クレイグを夢見る女性など世界中にごまんといるはずである。特にウケを狙ったつもりもないのにこの反応は何?

007 スペクター [DVD]

うっすら嫌な予感がしていたので、後日、こっそり夫に確認してみたところ、Sちゃんの質問の主旨は、

「有名人をメンターにできるとしたら誰がいい?」

ということなのだった。

メンターとは、人生やキャリアの師(モデル)として、助言や指導をしてくれる人。自分が目指すキャリアにおいて、成功している人や先輩にお願いするのがふつうだ。

そりゃ、声をそろえて「なんで?」と言いたくもなるわけである。

40過ぎの日本人のおばちゃんが、ダニエル・クレイグに、人生の、キャリアの、いったい何を導いてもらおうというのか?

それにしてもひどいリスニング力であった。"Don't be shy! " を胸にここまでやってきたけれど、いったいあとどれくらい恥をかけば済むのだろう、と思うと気がとおくなる。

ダニエル・クレイグだったら、どんな助言をくれるだろうか?

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*スイスでみつけた日本語の落書き。上手に書けてるのに惜しい、なおしてあげたい。