SABAすたいる

スイスのくらし、旅のエッセイ、日々のできごと、おもうこと。

胃ぶくろの潜在意識にみちびかれ。紅茶と読書と朝ドラと。

こと食べ物にかんして、いったん「XXの気分」になると、その気分はおそろしいほど執念深く潜在意識にのこるものである。

とあるランチタイム、友人とタイの焼きそば「パッタイ」を食べようと、近所のタイ料理屋にでかけた。ちょっと遅めのランチになってしまって、空腹感はMAX。甘酸っぱいソースの味や、パクチーの香り、と頭の中はすっかりパッタイ一色である。

だから、

「夏休み期間中は、ディナータイムのみの営業です」

という貼り紙をみつけたときの、わたしたちの落胆ぶりときたら。。

あとの予定がせまっていたので、別のタイレストランを探す時間はなく、向かいのパン屋の片隅で、サンドイッチでランチをすませたのだった。

焼きたてのバゲットで作ってくれるサンドイッチも、なかなか美味しく、悪くはなかったが、何しろ「すっかりその気」にさせられていたせいで、残念なきもちをひきずったままのいまいちなランチになってしまった。

とはいえ、その日の午後は忙しく、夕方にはすっかりパッタイのことなど忘れてしまった。つもりだった。

「あれ、夕ごはんに焼きそばってめずらしいね」

と夫。

「エビがあったから、たまにはいいかなーと思って」

と答えながらハッときづいた。冷蔵庫にエビがあったから焼きそばにした、というのはほんとうだが、そうだ、ランチのパッタイがまだ頭に残ってたんだ私。。

頭ではすっかりあきらめがつき、忘れていたつもりだったのに。

恐るべきは「胃ぶくろの潜在意識」である。

潜在意識といえば、このところどういうわけか、たてつづけに「紅茶党」の作家さんの本を読んだ。スティーヴン・キング石井好子森茉莉。それぞれ紅茶をテーマに書かれたものではないのに、なぜか紅茶のくだりが頭に残り、はなれなくなってしまった。

書いているときは、ガロン単位で紅茶を飲む。それ以外のときはビールだ。

「書くことについて」スティーブン・キング 

香り高く、色よく、おいしくいれた紅茶とこんがり焼けたトースト、サンドイッチ、クッキーなど、どんなご馳走よりおいしいと思うことがある。

「朝ごはんとお茶とイギリス人」石井好子

そういう苦心の末淹れた紅茶を、例の洋杯に氷を入れた上から注ぐと、英国製の紅茶はハヴァナの薫香か、ナポレオン・ブランディの香気か、というような香いを発する。

「貧乏サヴァラン」森茉莉

たった数行の文章なのに、ふだんコーヒー派の私がすっかり紅茶にそそられてしまうのだから、やっぱり作家の文章のちからはすごい。

おりよく夫がロンドンに出張するというので、紅茶とビスケットをお土産におねがいすることにした。空港でささっと買えるようにと、メーカーと茶葉の種類をメモしてわたす。

茶葉の種類にはあまり注意をはらったことがなかったが、今回調べてみると、味、香り、入れ方、食べ物との相性など、ワインなみに違いがあることを知っておどろいた。

入れ方で重要なポイントは「あつあつのお湯をつかって、ティーポットで温度をキープして茶葉を十分蒸らして抽出すること」らしい。

ふだん、夫が紅茶は一切飲まないひとなので、ひとりで紅茶を飲むことが多いということもあって、わが家には紅茶用のティーポットがない。

結果、いつもティーバッグか一人用の茶こしでささっとマグカップに淹れるという、重要なポイントを全く無視したいれかたをするしかないのだけれど、だからといって一杯のためにティーポットはさすがに必要ないかな、と思っていたら目からウロコ。

「1杯目は、薄めのところをストレートで、2杯目からは濃いめのところをミルクティーにするか、ストレートで味の変化をたのしむ」のが紅茶を余すところなく味わう方法だという。

ティーサロンで出てくる、ミルクピッチャーやティーコゼー、お湯の入ったジャグなど、ただのお飾りと思っていたら、すべてに意味があったのねと合点がいった。

ちなみにお湯はティーポットに足すのではなく、ティーカップに足して濃く出た紅茶を薄めていただくのが正解だ、というのもはじめて知った。

ここまで知ってしまうと、ぜひティーポットでいれてみたくなるというもの。

せっかくなので機能的なティーポットを、とネットで調べてみると、お鍋で有名なルクルーゼのティーポットが優秀らしい。

優れたティーポットの条件とは、以下のとおり。

  • 茶の味・香りがティーポットに移らない素材のもの
  • 保温性にすぐれている素材のもの
  • ジャンピングがおきやすい丸みを帯びた形状もの
  • 注ぎ口のキレがよいもの

ルクルーゼのティーポットは、このすべてを満たす上に、ストレイナーも付属していて、1リットルぐらいいけるサイズ感もいい。シンプルな白が使いやすいかなと当たりをつけてさっそくお店にいってみた。

「チェリーレッド、かわいい!」

なんと想定外の「赤」に一目惚れしてしまった。でも、白とちがって何にでも合うわけじゃないしどうしよう、と迷う。

「白なら他のブランドでも買えますよ。でもこの赤はルクルーゼにしかありません」

天の声ならぬ店員の声に、

「ください」

衝動買いしてしまった。

かくして、ティーポットが我が家にやってきた。

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インド人の友人にいただいたティーコゼーも、これでやっと陽の目をみる。

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ミルクピッチャーは、だいぶ前にフランスの修道院でもとめたもの。

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ひとりのときは、アボリジニの村の土で焼いたこの小さな器にミルクをいれてもいい。

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ビスケットは、出雲の湯町窯のお皿でもいいし、

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フィレンツェのベッキオ橋のたもとで見つけた手描きの小皿にのせてもいい。

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世界中のあちこちから、じぶんでもとめたものからいただきものまで、なんの脈絡もないものたちだけど、こうして合わせてみると、案外しっくりきている「チェリーレッド」なのだった。

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今日は夫がねぼうして、朝ごはんをパスして出ていったので、ゆっくり紅茶でひとり朝ごはんである。朝ドラの「とと姉ちゃん」をみながらふと気づいた。そういえば、森茉莉石井好子も、暮らしの手帖社と深いかかわりのある作家である。

この本は4月に京都の蔦屋書店で購入したのだけど、ライフスタイル関係の本がやけに充実していて、暮らしの手帖社の本がずらりとならんでいたのは、この朝ドラつながりだったのか。。といまさらながらに気づく。

暮らしの手帖の愛読者でもなく、朝ドラ自体、特に海外に暮らしてからは見たこともなかったのに、なぜか気になってこの「とと姉ちゃん」をみることになったのは、潜在意識にこの時購入した暮らしの手帖社つながりの二人の本があったからか?

ドラマのプロモーションに乗せられただけ、ともいえるが。。

選ぶもの、出会うひと、じぶんの行動。つながっていないようでいて、どこかでつながっている。潜在意識っておもしろい。

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*ロンドン出張のお土産。荷物にならないよう「紅茶を2缶とビスケット一箱」だけとお願いしたのに、甘党の夫、ビスケットを買いすぎてしまったもよう。