くららの手帖

ローヌの岸辺暮らし、ときどき旅

ぶどう畑のオトナ婚。熟成されたカップル&スイスワインでほろ酔い気分

スイス・レマン湖沿いの葡萄畑ラヴォーにあるちいさな教会で、50代の友人カップルが結婚式を挙げた。ともに再婚、おたがいの子供たちも参列しての「オトナ婚」である。

新郎は、グローバルにビジネスを展開するエリート。自家用飛行機やワイナリーを所有したりするお金持ちにして、ジョージ・クルーニー似。

ミーハーな私の好奇心がムクムクとふくらんだ。

いったいどんなドラマチックな出会いだったのだろう?

豪華クルーザー?はたまた、セレブなパーティで?

新婦のお母さんが、スピーチに立った。

「いっしょに宿題をしていたのをおもいだします」

意外や意外、地味な出会いに、見当ちがいにふくらんだわたしの好奇心はパチンとはじけて消えた。

ふたりは小学校の同級生だったのである。

が、よく考えてみると、幼なじみが、40年近くの歳月別々の人生を歩んだのちに50代で結ばれるなんて、ちょっとすごい。40年モノの熟成したふたりの関係、なんて、オトナ婚ならではのロマンティックななれそめである。

教会での式のあと、ふたりを祝うレセプションがひらかれたリュトリは、世界遺産にも登録されているラヴォーの片隅にあるちいさな街。レマン湖から緩やかにたちのぼる丘陵地帯には、古くはローマ時代からといわれる、ぶどうの段々畑がひろがっている。

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南向きにひろがる斜面には、さんさんと太陽の光がふりそそぐ。くわえて、湖からの反射光と石垣に蓄えられた輻射熱を受け、ワイン造りに適したおいしいぶどうが育つのだそう。

夏にはぶどう畑を縫うようにして走るミニトレインやハイキングが人気で、途中ワインのテイスティングやながめのよいレストランで食事もたのしめる。

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15〜18世紀の貴族の館や商館がならぶちいさな中世の街は、細い石畳を歩くと、ワインの樽をテーブルがわりに店先にだしたバーや、こじんまりとした感じのいいレストランが軒を連ねる。

以前たちよったガラス工房では、ちょっとおもしろいワインボトルをリサイクルしたこんなトレイをみつけたり。ギャラリーや雑貨屋さんをのぞいてみるのも楽しい。

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と、どこからか猫があらわれて、わたしたちを先導するように歩き始めたので、あとをついていく。時計塔のある広場に出ると、猫は、いちもくさんに広場の中央にある水飲み場に駆けていった。

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なーんだ、のどが渇いていただけ?案内してくれたわけじゃなかったのね、とがっかりしたのだけれど。はたして、レセプション会場は、この時計塔の脇のちいさな扉のむこうに隠された中庭にあったのだった。

バーカウンターには、地元ラヴォー産のワインはもちろん、新郎のワイナリーのスイスワインがずらり。

まずは地元の白ワインをグラスになみなみとついでもらう。大きなテーブルから、生ハムやチーズ、うずらの手羽先、サーモンのリエットなどをお皿に盛って、屋外のテラスにでると、階下からにぎやかにさわぐ人々の声がきこえてきた。

バルコニーからのぞくと、石畳の路地に空色のワゴン車が一台。

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「いくわよー」目があった女性が投げてくれたのは、

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シャスラという品種のぶどう。

このぶどうからスイスの白ワインがつくられるのだ。

ひとくち口に含んでみる。とっても甘い。

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道行くひともつぎつぎにぶどうをもらいにくる。

よくみるとワゴン車の荷台にはひとがぎっしり。ワイン片手に、かなりいい気分になっているこの人たちは、地元のぶどう農家の人たちなのだった。きけば、この日がぶどう収穫の初日。今年の初荷を出荷したお祝いにさわいでいるのだそう。

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クラクションに、カウベルに、沿道からの歓声。すでに地元ワインでほろ酔い気分の私たちもバルコニーから手をふる。

日に焼けた農家のみなさんのこの表情をみれば、今年のぶどうの出来は上々なもよう。さてさて、今年のワインはどんな味になるのだろう?

f:id:sababienne:20161022005836j:plain*帰り道、湖の船着場にでると、夜空には満月がぷかりと浮かび、水面を照らしていました。なが〜い歳月をへて結ばれた友人カップルの幸せそうな姿を目にしたからか、飲みすぎたワインのせいか、はたまた満月のせいなのか?しばしロマンティックな気分に浸った夜でした。