くららの手帖

ローヌの岸辺暮らし、ときどき旅

ベルン、とある冬の日曜日の風景。未知なるスイスをもとめて。

二泊三日の母娘ミラノショートトリップ。せっかくなので帰り道はベルンで途中下車することにしました。

せっかくスイスの娘をたずねてきたのに、スイスを全く観光しないのもナンですし。

しかし、冬のオフシーズン、しかも日曜日、という二重苦のベルンです。ちらり不安が頭をかすめる娘でしたが、朝6時起きで地下鉄に乗り、ミラノ中央駅で朝ごはんをたべたあと、7時台のユーロシティでミラノからベルンにむかったのでした。

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この電車、一等と二等車両のちがいがあるだけで、指定席と自由席車両の別がありません。全席指定じゃないのに、どう区別しているんだろう?と不思議だったのですが。乗ってみてなるほど!これってすごく合理的。

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こんな風に、予約が入っている席には「その区間」が表示されていて、それ以外の席は「自由席」と表示されています。一つの車両に自由席と指定席が混在してるのです。

これっていまどき普通ですか?

変なことに感心することしきりの娘をよそに、そんなことには無関心な母はすっかり「世界の車窓から」ワールドです。

ユーロシティはマッジョーレ湖沿いに北上し、国境の町ドモドッソラへ。そこからシンプロントンネルを抜けて、アルプス越えです。トンネルを抜けるとそこはスイス。そして、雪国でした。

「寒さがちがう!」

ベルンに降り立った瞬間、ひしひしとかんじます。

たとえ同じ気温でも、スイスとミラノでは寒さがちがう、と友達が言っていたのを思い出しました。イタリアのガイドブックには、ミラノは寒いとしつこくかかれていたので、完全武装ででかけたのですが、拍子抜けするほど暖かく。。

たしかにローマやナポリとくらべたらミラノは寒い。けれども、スイスとくらべればあたたかい。なにごとも比較のもんだいですね。

マフラーをきっちり巻きつけて、ベルンの町へくりだした私たち。

そうです。

その日は日曜日だったのでした。

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しーん。

旧市街の目ぬきどおりも、人影まばら。おかげでいい写真は撮れますが、素敵なショップも軒並み閉店。ウィンドウショッピングしかできません。

バラ園にむかうも、あたりまえですが11月に花をつけているバラなどなく、そうなるともうそれはただの公園です。

気をとりなおしてクマ公園へ。さすがに観光スポットだけに観光客でにぎわっていますが、いけどもいけども肝心なクマが見当たりません。

そして見つけたのが、この看板。

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ごめんなさい。ただいま冬眠中です。

お店が開いてない商店街に、バラのないバラ園に、クマのいないクマ公園。

ないないづくしの「冬」の「日曜」のベルンなのでした。

せっかく来たのに、何ひとつ見れず。。日本からはるばる来た母に、ちょっと申し訳なく思ったのですが、

「いーの、いーの。しゃべりながら、歩くだけで楽しいんだから」

案外、たのしそうにしている母なのでした。

たしかに、とりとめのないおしゃべりをしたり、目的もなくぶらぶらするのが楽しくて、何みたんだかどうでもよくなっちゃうことってありますよね。

どこを旅するか、何を見るか、何を食べるか、とおなじくらい誰と旅するかってだいじだなんだな。

ないないづくしも、振り返ってみればそれなりにいい思い出となるのでしょう。

旅行者にとってはホープレスな、ヨーロッパの冬の日曜日。

とはいえ、さがせばそれなりに希望をみいだすことができたのでした。

ようは気のもちよう、といいますか。(やや、負け惜しみ。)

たとえば、バラはなかったけれど、眺めとランチが絶品だったローゼンガルテン

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ベルンの旧市街をのぞむ窓際の席で、薪ストーブにあたりながら、いただいたゴルゴンゾーラのサルティンボッカと、スパイシーなソーセージ。公園内のカフェレストランにしてはクォリティが高く、赤ワインがすすみました。地元のひとにも人気のお店だそう。予約客でいっぱいの店内でした。

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*バラ園からの旧市街のながめ。

そして、ほぼ全滅の商店街で、珍しくオープンしていたのは老舗菓子店のチーレン。スイスのお菓子は、素朴でやさしい味です。

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さいごに立ち寄ったベルン美術館は、ホドラーなどスイス人画家の作品をはじめ、近代絵画が見られる常設展が無料でした。

さて、ミラノ・ベルンショートトリップも終わりに近づいてきました。

午後3時、ベルンから自宅のあるジュネーブに帰ります。

「夕ごはん何にしよう?!」

夫が出張から三週間ぶりに帰宅している現実が、きゅうに脳裏をよぎりました。

「イタリアン以外がいい」と母。

たしかにイタリアンはもう十分。なにかこうホッとできるものがいいなぁ。

「フォンデュにしよう」

そうさらりと、口からでてきたのには、われながら感慨深いものをかんじてしまいました。旅行から帰って真っ先に食べたいものが「フォンデュ」とは。。

わたしもすっかりスイス人化したものです。

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ちなみに、フォンデュは日本の鍋料理と同じで冬の料理。観光シーズンの夏よりは、シーズンオフの冬にいちだんと美味しく食べられます。数少ないスイスの冬のアピールポイントといえるでしょう。

ところで、今回スイスにくるにあたり母が携えてきたのはCREA TRAVELLER「未知なるスイス」です。

CREA Traveller 2016 Autumn 未知なるスイス

CREA Traveller 2016 Autumn 未知なるスイス

 

山だけじゃないスイスの魅力満載で、美しい写真とストーリーに思わず行ってみたくなる場所ばかり。ベルン以外にも行きたいところをいくつかチェックしていた母でしたが、ざんねんながら寒すぎて。。

正直、スイスの冬、街歩きはキツイです。

母上さま、つぎはぜひ暖かい季節に再訪くださいませ。