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SABAすたいる

スイスのくらし、旅のエッセイ、日々のできごと、おもうこと。

愚妻のミッシェル?オバマさんの胸キュンスピーチにおもうこと。

ライフスタイル

欧米人のほめ言葉は、ことば半分に聞いといたほうがよいよ。

この、友からのありがたい助言は、つねづね肝に銘じているところなのですが、コレばかりは別モノ!と思ったのが、オバマさんの大統領退任スピーチです。

終盤のミッシェル夫人に贈られたことばがステキすぎて、おもわずキュンとしてしまいました。

ミッシェル。

この25年間、妻であり、母であるだけでなく、わたしのベストフレンドでいてくれましたね。

みずから望んだわけではない役割を引き受け、気品と気概そしてユーモアも忘れずにやり遂げてくれました。

ホワイトハウスを開かれた場所にし、ロールモデルとして若い世代が志を高くもてるよう導いてくれました。

ぼくは君を誇りに思います。君は国の誇りです。

わき上がる歓声と拍手のなか、オバマさんがあふれる感情をかみしめる表情。

それを照れたりせずに堂々と受け止めるミッシェル夫人の余裕の笑顔。

何の変哲もないことばでありながら、夫婦として、父と母として、そしてパートナーとして強いきずなで結ばれていることがひしひしと伝わる、聞いている者の胸にささるスピーチでした。


President Obama tears up praising Michelle's grit, grace and style

ところで、冒頭の「欧米人のほめ言葉は〜」の助言をくれた友だちは、旦那さんがアメリカ人の国際結婚の大先輩。

このスピーチについても「これぐらいのことは、その辺のさえないおっちゃんでも言えちゃうのがアメリカだ」と冷めた反応です。

いわく、愛してる、きれいだ、ゴージャスだなんてアメリカ人が言っても、真に受けちゃだめ!だそう。

この問題については、通訳者の米原万里さんもエッセイに書かれておりまして、

自己と自己の近親者を口を極めて絶賛する傾向は、欧米人とりわけ、アメリカ人の言語習慣に根付いており、一種の枕詞や挨拶のようなもの。要するに字句通りの意味をすでに失っている。

「ガセネッタ&シモネッタ」 米原万里

いっぽうで日本文化においては、

自己と自己の近親者に関する表現においては限りなく自己卑下に近い謙譲の美徳路線を堅持することが求められている。教養と常識を身につけた大人とは「愚妻」とか「豚児」とか「ふつつかな娘」とかいう表現をよどみなく言える人のことである。だからといって、その人が自分の妻を「愚鈍」で、息子を「豚のように意地きたなく」て、娘のことを「無能で行き届かない」と考えているとは限らない。むしろ内心は逆かもしれないのだ。

「ガセネッタ&シモネッタ」 米原万里

ガセネッタ&(と)シモネッタ (文春文庫)

ガセネッタ&(と)シモネッタ (文春文庫)

 

*国際通訳のおもしろエピソードがいっぱいのエッセイ

つまり、アメリカ人が「魅力的なうら若きすこぶるつきの美女」などといってヨボヨボの老女(妻)を紹介したのをそのまま日本語に訳すのも、日本人が「愚妻」といって紹介するのをそのまま英訳するのも、通訳としては誤訳であるとおっしゃっています。

「字句を訳さず、意味を訳せ」

…とするならば、もしかしたら、オバマさんのスピーチも「愚妻のミッシェル」ふつつかなサーシャ」と訳されるのが本来の日本語のニュアンスに近かったりするのかもしれません。

なんだかミもフタもないはなしになってきましたが、

この日本人的自虐・謙遜フレーズ。

「日本じゃ妻のことはMy stupid wife、娘はMy useless daughterって紹介しなきゃいけないんですよ」

などと、夫(スイス人)がパーティなどのスモールトークネタとしてよく使っているのですが、欧米人にはシュールな話題としてけっこうウケてるみたいです。

先日も、わが夫が長期出張に出ると聞いて「さみしいでしょう?ついていけばいいのに」と言ってくださった知り合いの奥さま(ドイツ人)に、「いえいえ、せっかく夫から解放される貴重なバカンスなんで、ひとり楽しませてもらいたいものですワ」と、口をすべらしてしまったわたし。

(注:欧米の奥さまがたは、こういうことはまずもって言いません)

けげんそうな顔の奥さまに「ぼくは”ぬれ落ち葉”ですから。うっとうしい”亭主は元気で留守がいい”んですよ」すかさず覚えたての自虐フレーズを披露する夫なのでした。

日本語ほど「自己卑下」や「自虐」にかんする表現が豊かな言語って他にないそうですが、こうしてみるとごもっとも、ですよね。

どうせ覚えるのなら、もっと使える日本語を覚えてほしいと思うのですが、アメリカ人なら「あなたの日本語はアメイジングだわ!」と絶賛するところなのでしょう。

オバマさんみたいなのには憧れますが、わが身となると。。

やはり日本式が落ちつくようです。

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オバマさんが大統領就任したときのミッシェル夫人とのファーストダンス。もはや「ほめ言葉うんぬん」を超越してステキなカップルです。トランプさんのファーストダンスとはだいぶ絵面がちがいますね。。