SABAすたいる

スイスのくらし、旅のエッセイ、日々のできごと、おもうこと。

ひとのぬくもりが恋しくなる映画。「ズッキーニとよばれて」は大人にもオススメのクレイアニメ

ずーっとずっと心待ちにしていたDVDが手元にやってきた。

「ズッキーニと呼ばれて」(原題:Ma vie de Courgette)

惜しくもゴールデングローブ、オスカーは逃したけれど、フランス版オスカーとも呼ばれるセザール賞で最優秀アニメーションに選ばれるなど、数々の映画祭に出品・受賞をはたした話題のストップモーションムービーである。

MA VIE DE COURGETTE

*スイス・フランス合作。東京アニメアワードフェスティバルにもノミネートされていたようですね。

ストップモーションアニメといえば、チェブラーシカやピングー。

粘土でつくったセットの中で、人形を数ミリ単位で動かしながらコマ撮りする作業には、気が遠くなるような時間とテマヒマがかかる。

じっさいメイキング編を見てみると、これがもうタメ息モノのプロセスなのである。


Module "Ma vie de Courgette" LES MARIONNETTES

スケルトンにシリコンやラテックスなどのボディをかぶせて、一体一体作られるフィギュア。

様々なパターンのまるでチョコレートの詰め合わせのようにケースにおさめられた「くちびる」や「まぶた」などのパーツ。

一針一針、チクチク縫われた手づくりの衣装。

細かいところまでこだわった粘土の小道具やセット。

一コマ一コマ、パソコンで確認しながら撮影していく作業などなどなど。


Ma Vie de Courgette: Making Of

スイス人のクロード・バラ監督いわく「映画化の構想から7年、20秒撮るのに丸一日、アニメ撮影だけで10ヶ月を費やした」のだそう!

(せっかちな私にはとても無理。。)

さぞかし根気のいるツライ作業だっただろうと思いきや、ミニチュアのセットの中で大きなカラダをかがめて人形をうごかす大人たちは、こどもみたいに目がキラキラしてとっても楽しそう。

そして声優のこどもたちは、声だけなのに実際にうごきながら演技している。だから、とっくみあいのシーンも、しんみりやりとりするシーンもじつに自然でリアル。


Module "Ma vie de Courgette" LES ENFANTS

このテマヒマ感、手のぬくもり、つくり手のワクワク感は、全編を通してスクリーンからもにじみでていて、3DやCGにはもう驚かなくなった私たちに「逆に新鮮!」なおどろきを与えてくれるのである。

ところで、ズッキーニ(仏:Courgette)というのは主人公の少年の名前。

本名は別にあるのだけど、亡くなった母親がいつもそう呼んでいたので「ぼくの名前はズッキーニ」とこの愛称をとてもだいじにしている。

彼にとっては、アルコール中毒の母親から受けた数少ない愛情らしきモノが、この「ズッキーニ」という愛称なのだ。

不慮の事故で母親を亡くし、ズッキーニは孤児院に連れて行かれる。

そこで出会うのは、攻撃的だけどじつは優しいシモン、大人っぽくてみんなが好きになってしまう女の子のカミーユ。

それぞれ虐待をうけたりして、トラウマを抱えるこどもたちだ。

そんな子供たちにそっと寄りそう先生、そしてズッキーニをしずかに見守る警察官のレイモン。そんな人々との出会いをとおして、ズッキーニはさまざまな大切なことを学ぶ。

 人に心をひらくこと

 人を愛すること

 人を信じること

 人の痛みを感じること

 人によりそうこと 

そしてズッキーニは「ぼくの人生」を生きて行くのだ。

世の中は不平等で、理不尽。

ときには子供であっても、というか子供だからこそモロにきびしい現実を受け入れるしかない。それはとてもつらいことだ。そんな状況でもなお、ものごとの本質をみようとするこどもたちのまなざし、孤独と向き合うすがたには、思わずハッとさせられるものがある。

そしてあらためて思ったのが、人はみんな絶対的に孤独だということ。他人の人生を生きるわけにはいかず、自分の人生を生きるしかない。

でもだからこそ人と人はひかれ合うのかなぁなんて。

見終わるとなんだか人のぬくもりが恋しくなってしまう、、そんな映画でした。

日本でも公開されるといいのですが。。

もしくはNHKあたりで放送してくれないかなぁ。


My Life as a Courgette / Ma vie de Courgette (2016) - Trailer (English Subs)

*子供たちのメランコリックでアンニュイな雰囲気がとってもイイ。子役って必要以上に「子供らしく、ハイテンションで、かわいい」のがステレオタイプだけど、この物憂げなかんじがリアル。どこかさみしげで、でもひょうひょうとした明るさのある音楽もこの世界観に一役買っていてステキです♪