まったく自覚はないが、いちおう私、ステップ・マザー(つまり、継母)なのである。
出会ったときには、とっくに成人していた、というのもあるし、遠くアメリカで暮らしているP君とSちゃんは、わたしなどよりよっぽどオトナで、しっかりしているからというのもあるのだけれど。
とにかくステップ・マザーといわれても全然ピンとこない。
まったくこない。
が、ピンときてもこなくても、ステップ・マザーという肩書きを、別のものに変えるわけにもいかないのだからしかたがない。
しかたがないのだけれど。
と、何を急にうろたえているのかというと、ステップ・サンのP君が、このたびめでたく婚約し、フィアンセのMちゃんを連れてスイスに遊びに来たのだ。
そう。
ステップ・マザーとして、はじめて対外的に紹介される機会がやってきたのである。
いつもは、グダグダの名ばかりステップ・マザーだけど、初対面のMちゃんにとっては、なんと言っても、ステップ・マザー・イン・ローなのだ。
(そんな肩書きが存在するのか不明だけど)
これはつまり「しゅうとめ」であると同時に「ままはは」、言いかえるならば「義理の継母」である。
なんか、すごいことになってきた。
というわけで、すこしはステップ・マザーらしくふるまわねば。。と殊勝な心もちで、Mちゃんお披露目のファミリーディナーにのぞんだのだった。
その席上で、話題にのぼったのが、スイスの農家に古くから伝わる「チーズ占い」である。
お嫁さんを選ぶときに、グリュイエールチーズの切り方で、
- 皮をぶ厚く切り取るひとは、経済観念に欠け、家事も雑。
- 皮をぎりぎりまで薄く切り取るひとは、神経質で、性格がきつい。
- 皮をちょうどよく切り取るひとは、良妻賢母になる。
などと性格を判断するという、スイスらしい素朴なものだ。
そういえば。
と、義兄がこちらを向くので、嫌な予感がしたら案の定。
「SABAの時はどうだった?」というのである。
どうか話をふられませんように。この話題になったときから、ひたすら祈っていたのに。
祈りは天に届かなかったもよう。覚えているくせに、空とぼけて質問するなんて、いじわるな義兄なのである。
こたえは、
皮まで食べた。
あまさず食べた。
想定外の結果に、性格は判定不能。
この占いが大好きだった義父が生きていたら何と言っただろう?親戚一同をうならせる、破天荒な嫁デビューを飾ったのは、つい昨日のことのように思われる。
アレを超える結果はそうそうないから、安心していいよ。
口々に言われてやっと、ずっと堅かったMちゃんの表情がほどけたのは、よかった。
よかったけれど。。
「義理のままはは」の威厳はいずこへ?
なんだか納得いかない、ステップ・マザーなのである。
*その後、夜更けまで親戚一同で興じた、スイスの国民的カードゲーム、Schieber Jass。いまいちルールが飲み込めていない私、おかげでちょっと冷めた目で、プレイする皆を観察することができます。チーズ占いよりよっぽど性格が丸出しになってることには、たぶん気づいていない皆さんなのでした。