SABAすたいる

スイスのくらし、旅のエッセイ、日々のできごと、おもうこと。

そのモチベーション。

おしりに火でもつかないかぎり、モチベーションを維持するのがむずかしい語学。

それでも日本にいたころは、おしりに火がつく機会がそこここにありました。

きゅうな海外出張、外国人のアテンド、英語のプレゼンテーション。

それがスイスで暮らすようになってからは、そういう機会がめったにありません。

海外で暮らしていること自体、モチベーションになるんでは?

そう期待していたのですが、慣れというのはおそろしいもので。

いったん、そこそこ生きていけるとなると、そこに安住してしまうのが「人間」というモノのようです。

というわけで、当初は意気ごんでいたフランス語も、さいきんでは開き直りの境地。

最低限ひつようなことはマスターしたし、英語ですむ場合がおおいし、ずっとここに住むわけでもなし。

開き直った理由なら、いくらでもあげることができてしまいます。

「もっとフランス語が話せたら、楽しいのにな!」

そうおもう瞬間はもちろんありますが、

Nice to have (あったらいいな)レベルじゃ、もはやピクリともうごかない、わがモチベーションなのでした。

ところが先日。

その微動だにしないモチベーションを、急上昇させる機会が、やってきたのです!

Dictionaries

とある美術館に、印象派展を観にでかけたときのことです。

人気の企画展で、館内はそれなりに混んではいましたが、日本の美術館の「混雑」にはほど遠く、ゆったり自分のペースでみてまわれるよゆうがありました。

夫とも別行動することにして、ひとり気のおもむくまま。

そのモネの絵も、ちょうど誰もいなくてぽっかり空いていたので、ふらっと足を止めたのでした。

じっくり鑑賞しようとした、そのときです。

いきなり目の前が真っ暗になって、鼻先から壁にぶつかるような衝撃をかんじました。

あやうくしりもちをつきそうになりながら、なんとか体勢をたてなおし、よくみてみると、壁だと思ったのは、かっぷくのよいオジさんの背中です。

なんと、みず知らずのオジさんが体当たりしてきて、私の鼻先で仁王立ちしているのでした。

(この状況は、なに?)

とまどうわたしに、くるりと向き直ると、オジさんは顔を真っ赤にして、フランス語でこうまくしたてました。

「そっちが先に、たちふさがった、仕返しだ!」

だれもいないと思ったのですが。

なにぶん大きな絵ゆえ、オジさんはすこしさがって部屋の真ん中あたりから、遠目に鑑賞していたらしいのです。

そこに私が登場して、運悪くオジさんと絵のあいだで立ち止まってしまった。

それが「気に入らない!」というわけ。

Monet

それにしても、です。

それならそうと、言葉でいってくれればすむ話。

体当たりとか、仕返しとか。

「こんな抗議のしかたってあり?」

わたしが言いたかったのは、そのひとことでした。

とどうじに、思ったのです。

わたしが男だったら、もしくは西洋人だったら?

オジさんは同じことをしたでしょうか?

しないんじゃないかな、と思いました。

さわぎにきづいて夫(男、西洋人、ついでにオジさんと同年輩)が登場するや否や、とたんにモニョモニョモニョ、となって退散していったのが、その証拠です。

つまりは、相手を選んでしていることなのです。

くやしくて、くやしくて。

それ自体もくやしかったけど、言いたいことが山ほどあったのに、なにひとつフランス語で言えなかったことが何よりくやしくて!

とまぁ、せっかくのモネよりも、オジさんの印象ばかりがキョーレツにのこった印象派展だったわけです。

翌週のフランス語レッスンで「Protester(抗議)」のページに、おびただしいかずの付箋が貼られたことはいうまでもありません。

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鼻息あらく唱える、わたしにむかって、先生がぽつり。

「そのモチベーション。半年でいいから維持できるといいんだけどねぇ〜」

ほんとうに!!!

負のエネルギーって、偉大です。

オヂさんに、感謝。