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スイスのくらし、旅のエッセイ、日々のできごと、おもうこと。

ライフスタイル

MGに試されていること

MG、という古い車を、リストア(修理)することになった。夫が十代のころお姉さんに借金して手に入れた、クラシックなスポーツカーだ。 かれこれ数十年、倉庫にいれっぱなしだったので自力走行はできない。修理してくれる修理屋を探すのにひとしきり苦労した…

そんな、バナナ話

夫は、毎朝バナナを食べる。 お米やパンが切れても平気なくせに、バナナが切れるとあわててスーパーに買いに走る。 夫の体の5%ぐらいはバナナでできているのではないか?とわたしは怪しんでいるのだけれど、世の中に「バナナ依存症」というものがあるとした…

忙しい病

「バタバタしてて」が口癖だった時期がある。 その頃のわたしときたら、かずかずの不義理や不精の言い訳を、この口癖ひとつですませていたようにおもう。 残業する人が仕事熱心で、休む暇もないほど仕事を任される人が優秀。「忙しい」のが良くて「暇」は悪…

絵本の中のクニット君と、リアルのクニット君のお話。

ムーミンシリーズ全9巻を、読み終わった。 読みはじめたのは、東京でムーミン展に行ったとき。 アニメは子どものころさんざん観たものだけれど、そういえば小説は読んだことがなかったな、と思いたってからだから、かれこれ一年以上もかかってしまった計算に…

向日葵通り一丁目。いま此処で、この人と

T・o・u・r・n・e・s・o・l・s… カーナビに、住所をうちこむ、手が止まる。 向日葵(ひまわり)通り一丁目! 夕ごはんに誘ってくれたその友だちが、こんなかわいい名前の通りに住んでいたとは、今までまったく気づいていなかったのだった。 ジュラ山脈の麓に…

優しい嘘

証明写真といえばいまも昔も頭痛のタネ。スイスにきてからというもの、その頭痛はひどくなるいっぽうである。 靴修理店の片隅にある証明写真サービスに、レフ板などはあるはずもなく、照明は切れかかった蛍光灯。髪を整える用の鏡もなければ、時間もない。 …

おしゃべりな猫

そとを出歩く時間がへったぶん、ベランダですごす時間がふえた。 「キャンドルの木」とよんでいる、マロニエの木が芽吹きはじめたなぁとおもったらもう、いまではそのキャンドルが花をつけている。 ベランダでごはんを食べたり、本を読んだりしていると、そ…

夜空に、メルシー!

あのあと。 (というのは、「濃厚接触を避け、ナマステにしておきなさい」と父から忠告を受けたことを、ココに記したあとのこと) じつは、ナマステすらできない事態におちいっていた。 人混みを避け、濃厚接触を避け、あんなに気をつけていたはずなのに。 …

おどらされず、ナマステ。

朝、窓をあけると、空高くとんびがスーッと横切っていった。 くちばしに、木の枝をくわえ、巣作りにせいをだしていた。 朝の空気は、まだ冷たい。 あわてて窓をしめて、キッチンにもどると「マロニエの芽吹きが、観測された」とラジオが告げていた。 スイス…

ひとちがい

スーパーマーケットで買い物中、わたしのカゴにお菓子の袋を入れてくる輩がいた。 てっきり夫だと思い「ダイエットするんじゃなかったの?」と咎めて顔をみると、これが赤の他人のおじさんで、つづく言葉をあわててのみこんだ。 気の毒なのは、おじさんだっ…

レネの机

いま必要というわけではないけれど、いつか手に入れられたらなぁ、と思うものを「欲しいものリスト」にして手帳に書き留めてある。 年始め、手帳を新しくするのと同時にこのリストを移しかえる作業が、何となく始まってしまった一年の、ぼんやりした気分にぴ…

ノープロブレム:のらりくらりコロンビアの休日(3)

「ノープロブレム!」 注文したのは、エビのセビーチェよというと、ウェイターの男の子は、大きな黒い目をクリクリさせてそういった。 はずかしそうにわらうと、口もとから真っ白な歯がこぼれ、その笑顔はただでさえ若い男の子をさらに幼くみせた。 あんまり…

八年ぶりの返事

誕生日の朝。 メールボックスをのぞくと、ムラーノ島からバースデーメッセージがとどいていた。 今朝、手帳をひらいたら、カレンダーにあなたの誕生日をみつけたから。 久しぶりだけど、元気にしていますか? ムラーノの空の下から、ハッピーバースデー! エ…

世にも美しい図書館が、教えてくれたこと。

どうして本を読まないといけないの? 夏休みがはじまる前、10歳になる甥っ子が不服そうに口をとがらせていた。 マンガだって、テレビだって、ゲームだっておんなじだよ。 どうして本じゃなきゃいけないの? そう問いつめられた妹は、困りはてていた。 「ため…

ビールとチーズと、赤いチョッキとこぐまパン。

アッペンツェルは、スイスの東の端。 ドイツ国境にほどちかい、ビールとチーズと、赤いチョッキの民族衣装、それから「こぐまパン」という焼き菓子が有名なのどかな街である。 「空色」の絵の具でひたすらぬりつぶしたような、どこまでもつづくあかるい空。 …

災難から、ぼたもち。

ボタンはボタンでも、陶器のボタンというものがある、ということを知ったのは、いつだったか、クリーニングに出したジャケットのボタンが、ボロボロになって返されたときのことだった。 灰色の地に、八つならんだ特大の白いボタン。 それが唯一の装飾で、ボ…

夫が気にいった、香水のはなし。

大人になるとホメてくれる人がいなくなる、と書いたところ、 「国際結婚なら、ダンナさんがホメてくれるでしょ?」 と、いう人がいた。 ダンナさまは、生粋の千葉県人、というM子さんだ。 「キレイだね、ハニー」とか。 「ステキだね、プリティ」とか。 「な…

マグロであれ、仔牛であれ、なんであれ。

近所の魚屋で、マグロが特売になっていた。 店先には、朱赤のマジックでしたためられた「大特価マグロ!」のおおきな文字が、いせいよくおどり、業務用のアルミのバットに、マグロの切り身がどっさり山もりになっていた。 日本の魚屋さんのように、きれいに…

川のながれに身をまかせ♪

おきたらまず窓をあけ、ベランダにやってくる鳥たちのためにエサをやる。 それからひとしきり、ローヌ川のながれをながめる。 まるで、隠居したおじいちゃんみたいだけど、これがわたしの朝の日課だ。 季節をおしえてくれるのは、樹木や草花だけではない。 …

賢者の贈りもの、嵐のあとに。

6月もなかばをすぎると、スイスの短い夏のはじまりを告げる、ちいさな嵐がやってくる。それは、あっという間にやってきて、あっという間に去ってしまうのだけど、ちいさいからといってあなどれないパワフルさで、わたしたちをおどろかせる。 はじまりは、こ…

クゥックゥーのマダムと、般若ちゃん。

数日前から歯が痛みはじめた。 とにかく、ちょっと歯ごたえのあるものを食べると痛みはじめるので、フワフワの甘い菓子パンしか食べられない。ここ最近はまるでハイジに出てくる、ペーターのおばあちゃんのような食生活をおくっている。 わたしには、変な寝…

朗読とバッハ、耳を澄ませば。

陶芸家のジョエルが、花器ばかりを集めたちいさな個展をひらくことになった。 ジョエルの工房には、毎年いけばな仲間と花器を作陶するワークショップでお世話になっている。 「それならば、花を生けて展示したらどう?」 ジョエルの友だちで、いけばなを教え…

100歳のブルーオニオン、渡されたバトン。

ジュネーブから車で10分足らずのサレーヴ山のふもと。 ちいさな教会と、カフェと個人商店が数軒、軒を連ねるだけのVeyrierは、フランス国境にちかい田舎町だ。 あるものと言えば、サレーヴ山に登るケーブルカーの乗り場だけど、この日わたしたちがここを訪れ…

ハワイ島ハヴィ、風のとおる家。

ハヴィは、ハワイ島の北の端っこにつきでた岬にある、風の街だ。 コナから海沿いの19号線を北に向かい、ワイメアからコハラマウンテンロードに入ると、景色は溶岩台地から牧草地へ一変する。 海までつづくこの道の、終点がハヴィ。 大地がストンと切り落とさ…

雲の上の、常連カフェ。スキーバカンス@ サース・アルマゲル

ことしのジュネーブの冬は、晴れの日が多くて暖かくて、なんだか冬じゃないみたいな冬だった。 霧がたちこめ、何週間もどんより曇り空に閉じ込められる、あのジュネーブの灰色の冬がやってこなかった。 だから、毎年二月、三月ともなると、太陽と青い空に恋…

CAREにはじまり、CAREに終わる。ロンドン、ジュリアナズ・キッチンのアフタヌーンティ

ロンドン郊外。 地下鉄を、セントジョンズウッドの駅で降り、地図をたよりに道をたどっていくと、すぐにあたりは閑静な住宅街になる。 イギリスらしい、古くてかわいい家がならぶ通りを、行きつ戻りつしていると、屋根を修理中の職人さんが、ハシゴをおりて…

トキメキに、水さすモノ。:パリ、ジャポニスムひとり旅(2)

パリの食器屋で、おもちゃみたいなカフェオレボウルをみつけた。 両手のひらに、すっぽりおさまるサイズ感。乳白色の、つるんとしたかたち。手描きの水玉の、よくみるとわずかに輪郭がブレてるゆるさ。かすかに翳りが混じった、びみょうなトーンの赤とむらさ…

大蛇ボアの話が、できるおとなに。

ごく親しい人たちとの集まりは別として、いわゆる社交というものが、あまり得意ではない。 が、得意だろうが苦手だろうが、年末年始の社交シーズンとなると、重い腰を上げねばならぬのが大人、というものである。 先日も、でかけていった集まりで、六年ぶり…

ハイテク切手と、クリスマス。

クリスマスカードを出そうとしたら、案のじょう、買いおきしてあるはずの切手が、どこにもみあたらない。 なんだか、毎年、おなじことを繰りかえしているような気がするのは、思いすごしだろうか? それはともかく。。 クリスマス直前の郵便局なんて、大混雑…

93才のバースデー・ブランチ

義母が、93才になった。 誕生日には、家族みんなであつまって、お祝いするのが恒例なのだが、それをだれが企画するのかといえば、義母がみずから仕切るのである。 それこそもう、場所選びから出欠とりにいたるまで、いっさいがっさい。 ことしはちょっと趣向…