くららの手帖

ローヌの岸辺暮らし、ときどき旅

ヨーロッパの冬、最高のぜいたくは日光浴。晴れた日の地味な休日の過ごし方

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紫外線はお肌の大敵!なのはわかっているが、ここ最近、からだが心底から日光を欲している。

ヨーロッパの冬は、いったん天気がわるいとなると、2週間でも3週間でもぶっつづけでわるいが、今年の冬はとくにひどい。 しとしと雨が続いたかと思うと町中すっぽり霧に覆われたりして、連日の曇り空に無彩色な街並みとくれば、気分も滅入る。

しかも、冬のあいだの日の短さときたら‥、朝8時になっても外は真っ暗で、皆、闇の中を通勤通学していく。反対に夏の日の長さは半端なく長く、22時になっても明るくて寝不足になるほどなのだけど、夏はあっけなく短い。一年の半分を長くて、暗くて、灰色の冬に閉じ込められているとなると、太陽も恋しくなるというものだ。

日本の冬は、わたしが住んでいた太平洋岸にかぎっていえば、晴天の日が多い。日本の家族や友達はヨーロッパの冬は寒くて大変でしょう、と心配してくれるけれど、意外と寒さでつらい思いをしたことはない。屋内に限っては、どの建物もたいてい断熱性が高く、全館セントラルヒーティングで暖房が効いているので、日本の古い一戸建てでリビングルームにしか暖房が入らない、わが実家にくらべるとこちらのほうが格段に暖かいくらいだ。じっさい、実家に帰ってあまりの寒さに風邪をひいてもどってきたことがあって、夫に笑われた。そう、寒さよりなにより、ヨーロッパの冬でつらいのは日光不足なのだ。

ここ数週間、その典型的な冬のお天気がつづいていたのだが、今週末はほんとうにひさびさに太陽が顔をだした。遅めの朝食のあと、さっそくローヌ川の河岸におりていくと、Tシャツ一枚でピクニックするひと、昼寝をするひとたちがてんでに陣取って、つかの間の太陽をたのしんでいる。旧市街のカフェのテラス席は、待ってました!といわんばかりにサングラスをかけた人々で大盛況。みずうみに渡されたロープの上では、かもめたちもお行儀よくならんで甲羅干ししていたのが、真珠のネックレスみたい。

曲がり角をとっくにすぎたお肌のことを考えると、陽射しは極力避けたいところなのだけど、今日にかぎってはこのひさしぶりの太陽を楽しみたい気分で、迷わず日向ぼっこの仲間にいれてもらった。植物ではないので、まさか光合成はしないと思うけれど、なんというか身体中にエネルギーが満ちていくような気持ちよさを味わった。

東京ではたらいていたころ、真夏のカフェのテラス席で、直射日光を浴び、汗だらだら、顔は真っ赤で死にそうになっているのに、うれしそうにしている外国人をみてクレイジーだと思ったものだけど、今は彼らの気持ちがすこしだけわかる。

が、ここで浮上してくるのが美容問題。紫外線のダメージは最小限に抑えたいので、無防備な日焼けはしないように注意しているけれど、陽射しが強い季節にはあっというまに真っ黒になってしまう。こうなると夏は外出しないことにするしか、日焼けを防ぐ方法がないと嘆いていたときに、いきつけの美容師さんからいただいた二択。

1.夏を楽しまずに真っ白な美肌のまま棺桶にはいるか?

2.夏をおもいっきり満喫してシミだらけで棺桶にはいるか?

うーん、棺桶にはいるときには美肌だろうがシミだらけだろうがどっちでも関係ないけれど、棺桶にはいる直前までは美肌でいたいし‥。夏は満喫するけど、日焼け止めを欠かさず塗って、少しのシミで棺桶にはいるのがベストか?というところに落ち着き、以来、日焼け止め専業メーカーの強力なクリームをこまめに塗るようにしている。

とここで、 今日はその日焼け止めを塗るのをわすれたことに気がついたが、あとのまつり。結局、ポカポカ陽気の中を二時間ほど歩いたあと、おなかがすいてきたので、なじみのベトナム料理店にはいり、春巻きとフォーを食べ、ビールを飲んだ。それからまた太陽が照りつけるなか、歩いて帰って、二人そろって昼寝した。目覚めたら、なんだか気だるい、懐かしい気分。何かと思ったら、プールの授業のあとのあのだるさだ。

なんにも特別なことはしなかったけどよい日曜日だった。夕方の天気予報で、明日からまた1週間は雨または曇りの冬の空に覆われるでしょう、と言っていて、今日、この先1週間分の太陽を貯金しておいてよかった、と心から思った。今週もまた冬の空の下、めげずにいこう。