くららの手帖

ローヌの岸辺暮らし、ときどき旅

インテリアショップで遊ぶ、雨の日の地味な休日の過ごし方。イマジネーションさえあれば‥

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灯りひとつで、雰囲気ってすごく変わる。どのくらい明るいか、に加えて、暖色系か寒色系のトーンかによっても全然ちがう。

たとえば、東京タワーだって、季節やイベントによって照明が変われば、全然ちがう表情をみせてくれるし、桜や紅葉も、昼間みるのと夜ライトアップされたものでは、まったく別の雰囲気になる。

オフィスでは、寒色系のきりっとした照明が合うけれど、家でくつろぐときには、暖かみのあるすこし暗めの照明が落ち着く。インテリアの雰囲気を左右するだけじゃなくて、ひとの気分にも影響をあたえるもの。

だから、照明えらびはけっこう重要だ。

昔、まだ合コンというものに参加することがあったころのこと。

お店えらびを任されて、先輩の女性から「肌がきれいにみえる間接照明の店にしてくれ」と指定されたことがあった。

さすが美容マニアの先輩。なんという美へのこだわり!と感心すると同時に、先日の合コンの敗因は、あのもんじゃ焼き屋の蛍光灯にあったのかもしれない、などと勝手に結論づけたりしたものだった。

じつは、我が家のダイニングルームの照明スタンドが壊れていて、買い替えなければならなかったのだけど、なかなか決めかねていた。気に入らないものを買うくらいなら、がまんしたほうがまし、とだましだまし使っているうちに、なんと半年がすぎてしまった。

今日は、やっとのことでお目当てのものを決めたので、お店に実物を見にいくことにした。 

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朝からの小雪まじりの悪天候のせいか、インテリアショップの広い店内は、他に客もない。店員もこちらから声をかけるまでは、バックオフィスで事務しごとをしていて、いい具合に放っておいてくれるので、ゆっくり見て回ることができた。

アパートメントの一室を再現したようなディスプレイ。まるで自分たちのリビングルームにいるかのような錯覚におちいった。

最近は、こういう展示方法が主流だけれど、このインテリアショップは、適度にごちゃっとして洗練されすぎていないせいか、よりリアルなかんじがする。住人になったつもりでキッチンにたってみたり、だれに気兼ねすることもなく、デザイナーズチェアの座り心地をこころゆくまでたしかめたりするのはとても楽しくて、しばしいい大人ふたりして「住人ごっこ」を楽しんだのだった。

インテリアショップは、無料で楽しめる美術館みたいなものだ。なので、わたしは特に用がなくても美術館がわりにときどき訪れる。旅先で訪れても、その国によってインテリアのテイストも違うし、それぞれのライフスタイルが反映されていておもしろい。

旅にでると、観光名所よりもそこに住むひとびとの暮らしに興味をそそられる。ほんとうは、地元のひとたちの家の中を見せてもらいたいぐらいなのだけど、それはなかなか難しい。だから代わりに地元のインテリアショップをのぞいて、イマジネーションを駆使し、地元のひとたちのくらしぶりを想像するのだ。

さて、肝心の照明スタンドはというと、ざんねんながら店頭に在庫がなく実物をみることはできなかった。注文生産で早くても一ヶ月かかるとのことで、オーダーだけして帰ってきたのだった。

店の外にでると、あたりはすっかり暗くなっていて、向かいのアパートの窓のいくつかには灯りがともされていた。

「住人ごっこ」の余韻をひきずった私たち。

灯りの向こうには、どんな部屋があるんだろう?どんな人がどんな暮らしをしているのだろう?と思いをはせながらバスを待った。

いろんな人生が、ひとつひとつの灯りのむこうにある。

イマジネーションさえあれば、ただのアパートも映画のワンシーンみたいにみえてくる。

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