スキーで楽しみなのはランチであり、休けいである。
どこまでもひろがる青空の下、360度つらなるアルプスをながめながらいただく自家製のホットチョコレート。スキーでひと汗をかいたあと、太陽の光をさんさんと浴びながら飲むつめたいビール‥。もしかしたら、スキーそのものより楽しみだったりするかもしれない。
ちかくの高級リゾート、サンモリッツに行けば話は別かもしれないけれど、ここは庶民的なスキー場の食堂。はっきりいってたいしたものがあるわけじゃない。素朴な山のごはんである。
たとえば、ベーコンやハムとパン。もしくは土地のチーズに田舎パン。専用のスライサーで削りながらパンといっしょに食べるめちゃくちゃシンプルなメニュー。
まさにハイジのおじいさんが食べていたような、素朴なメニューなのだけれど、ベーコンもハムもパンもチーズもそれぞれとびきりおいしい。
とくに年配のおじさまスキーヤーは、こういうシンプルなものがお好みのようだ。ワインをちびちびやりながら、ほろ酔いきぶんの赤ら顔があちらに一人、こちらにも。
いっぽう女性に人気なのは山のスープ。
押し麦や野菜、ベーコンをコトコト煮ただけのなんの変哲もないスープなのだが、いろいろな味がお互いを引き立てあっておどろくほど味わい深い。ひとくち飲むごとに、体のなかから癒されるようなやさしいあじだ。子供が風邪をひくと、お母さんがこのスープを飲ませるというのもなるほどうなずける。
夫がオーダーした、Rosti(レシュティ)というじゃがいものガレットとソーセージも定番だ。
このかりかりに焼いたじゃがいも料理は、こうばしくて甘みもあってスイス人の大好物である。普段から料理の付け合わせとしてもよく食べられる。
(スキー場のものは写真とるの忘れたので‥これは義母お手製のレシュティです)
それから、飲み物でわすれてはならないのは、アップルサイダー。
アルコール入りのものとアルコールなしのものがあるけれど、今回、高山病疑いで体調がすぐれなかった私はアルコールなしのものをチョイス。
このアップルサイダー、ナチュラルなスポーツドリンクみたいなもので、スポーツ中の栄養補給にぴったり。スキー場ではおすすめの飲み物なのだ。甘すぎず、しゅわしゅわしているので食事ともよく合い、アルコール気分でたのしめる。
これは夏にトレッキングでお世話になったガイドさんに教えてもらったのだけど、リンゴってクエン酸が疲労回復に効くうえに、糖分でエネルギー補給、果汁で水分補給もできる魔法のフルーツなのだそう。
かれはいつも山に登るときバックパックにリンゴをいくつか忍ばせていて、それ以来わたしもかれの真似をしている。旅行のときの疲労回復にも効くのでおすすめだ。
おいしい空気をいっぱい吸って、大自然のなかで体をうごかし、自然のめぐみをかんじながら山のごはんをたべる。
からだもこころも喜んでいるのがわかる。
クララが歩けるようになったのもふしぎではないな、などと思うのだった。