Scuolとその周辺は、湧き水の源泉があちこちにあって、古くからミネラルウォーターと温泉で有名だ。いまでも公共の源泉からは第一級のミネラルウォーターが村に供給されている。
じっさい歩いていると、道端から水が湧いているのをみることができる。泉のまわりの石が赤サビ色をしていたけれど、いったいどんな成分なのだろう?
中世のころに発見された源泉から、お湯をひいているという大規模な温泉施設が、Scuolの村の中心にある、というので行ってみることにした。
温泉自体は数百年の歴史をもつふるいものなのだが、施設はとてもモダンなスパ施設。泉質はアルカリ炭酸泉。循環器系疾患と精神疾患に効き目があるそうだ。
受付でバスローブとタオルを受け取り、更衣室で水着に着替える。屋内には、温度がちがう大小の浴槽、サウナがあり、屋外にはジャグジー、遠くに山が連なるのをながめながら、ゆったり体をあたためることができる。
ジャグジーに浸かって空をみあげると、暗くなりはじめた夜空に星が瞬いている。昼間、青空をバックに白くかがやいていた峰々も今はシルエットだけ。ゆっくり目を閉じれば体じゅうのちからが抜け、ゆるゆるとほどけていくのをかんじる。
それにしても、つねづね感じている疑問がある。
どうしてヨーロッパの温泉はどこもこうぬるいのだろう?
ちなみにココの温度は34〜37度。これって温泉というより温水プールじゃないかしら?
夫いわく、1時間とか2時間とかじっくり湯につかるには、これくらいぬるいのがちょうどいいのだそう。日本の温泉くらい熱いと10分ぐらいでのぼせてしまうでしょ?というのだ。
だまされたと思ってじっくり浸かってみましょう。と毎回試してみるのだけど、やっぱりぬるい。日本人にはぬるすぎる。。
まだお湯につかっているうちはいい。ちょっとぬるいな、ぐらいで済むのだけど、最大の難関はあがるときだ。シャワールームまでのほんの数歩のあいだに、ガタガタふるえが止まらなくなってしまうのだ。
で、毎回プールサイドをシャワーめがけて一目散に走り、ぶるぶる震える手でシャワーの蛇口をひねるはめになる。熱いシャワーを浴びてはじめて、ぷはぁーっと一息つけるという具合なのだからまったく本末転倒なのである。
これって欧米人とアジア人とでは体感温度がちがうからっていうのもあるのかなと思う。
前者は暑がりで後者は寒がり。私のくちびるが真っ青になってるとなりで、欧米人のご夫婦が顔じゅう真っ赤で汗だらだらになっていたりするもの。。
と、いろいろ不満をたれてみたが、本来なら温泉に入れるだけでもありがたいと思わなければいけないのだ。それに、なんだかんだ帰途につくころには、体の奥からポカポカしてくるのだから不思議なものだ。
これぞ温泉の底力とでもいうべきか?
出口でバスローブとタオルを返却し、フロントの脇にあるウォーターバーで湧き水のミネラルウォーターをのむ。からだのすみずみまでしみわたっていくような気がして、よくばって何杯もおかわりした。
温泉があるところというのはパワースポットだ、という。温泉に身を浸し、湧き水をたっぷりのみ、まさにこの地のエネルギーをいただいたような気分だ。
外に出るとすっかり暗くなった夜空に星がぴかぴかかがやいていた。
スキーバカンスも最後の夜。チーズフォンデュとキルシュでもうひと暖まり。ちょっとだけ夜更かししようかな。
*日本のおさるさん、あったかそうでうらやましい。