くららの手帖

ローヌの岸辺暮らし、ときどき旅

ところ変われば、おやつも変わる。

先日、トラムに乗ったら、きれいな女の人が、チコリをむしゃむしゃと食べはじめたのでびっくりした。

チコリ、というのは英語名で、フランス語だとアンディーブ。ちょっと苦味のある、小さな青梗菜のような、白菜のような野菜で、ハムで巻いてチーズをかけてグラタンにしたり、生でサラダで食べたりする野菜である。スーパーでは、ビニールの袋に5、6個ずつ入ったものが売られている。

いっけんしたところ、スーツにハイヒールでビシッときめたキャリアウーマン。スタイリッシュなパソコンあたりが出てきそうなエレガントな黒いレザーバッグから、チコリ5本パックが出てきたのが、あんまり意外すぎて目がはなせなくなってしまった。

手慣れたようすで、一枚ずつはがしてパリパリと食べていく。すずしい顔と流れるような動作が、あまりに自然でエレガントなため、思わず見とれそうになる。

お行儀悪い、とか、変な人、とか眉をひそめる人はいない。というより、そもそも気にもとめていないといったほうが正しいだろう。

まるまる1本半食べたところで、トラムはメインストリートに到着。彼女は食べかけのチコリを片手に、さっそうとオフィス街に消えていった。

出先で小腹が空いた時の定番といえば、さりげなく食べられるチョコレートやカロリーメイトみたいなものだろう。スイスでも、スーパーマーケットに行けば、日本の比にならないほどの種類のチョコバーやシリアルバーが売られているので、こういったものが人気なのはたしか。

が、まわりを見渡すと、圧倒的にフルーツを食べるひとがおおいのである。バナナ、リンゴ、オレンジといったあたりが定番で、たいていむき出しのままバッグに放り込まれている。

チョコバーなどよりも、フルーツのほうが断然安いし、季節ごとに味わえるさまざまなフルーツはどれも美味しい。

春から初夏にかけていちご、ラズベリーが旬をむかえ、そしてさくらんぼ。もうすぐアプリコット、プラムの季節がやってくる。もも、ぶどう、りんご、なしといった定番の果物も、選ぶのに迷うほどいろんな種類があって食べ飽きない。

それに、フルーツのほうが健康的だ。さすが日本にならぶ長寿国だけあって(最新のランキングでは、男性はスイスが世界一)普通のスーパーでも有機栽培のものやBIO製品が手に入るなど、ひとびとの健康志向はかなり高い。

安くて、美味しくて、健康にもいい。

郷に入っては郷に従う、の精神で、ちかごろでは私もすっかり「おやつはフルーツ派」になってしまった。

なかにはフルーツだけじゃなく、おやつは野菜、という人もいる。

背丈が2メートルちかくある大男のB君は、いつもニンジンやセロリをカットしたものを、タッパーウェアにいれ、おやつに持ってくるし、バスで、トウモロコシをものすごいスピードで、一列ずつきれいに食べているおばさんをみかけたこともある。

だから、ちょっとやそっとのおやつがバッグの中から出てきても、おどろかなくなったと思っていたのに。

それにしても、チコリとは‥。

まだまだ奥深い、スイスのおやつ事情である。

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プルーンやアプリコットの季節(七月〜八月)には、タルトを作ります。義母のレシピで夫が作りますが、フルーツの味がぎゅっと濃縮して絶品!

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野生のブルベリー摘みも、夏のたのしみのひとつ。これはおととしの夏、シャモニーで摘んだもの。売られているものより、若干酸っぱめなので、ジャムをつくりました。シャモニーに生息する野生動物、カモシカなども、このブルーベリーが大好物だそう。