母がどうしても見たい!というので、予約して朝イチで見にいった「最後の晩餐」。
「人生の最後になにを食べたいか?」
そうきかれると、おあそびと承知の上でも、妙に真剣にかんがえてしまうのはなぜでしょう?
同様に「旅先で何を食べるか?」というのも、真剣に考えざるをえない大モンダイ。ダ・ヴィンチワールドを堪能し、すっかりおなかが空いたようすの母に聞きました。
「本日の午餐は、何にしましょう?」
すこし考えて、母は言いました。
「何でもいいけど、きょうはイタリア人でいっぱいのレストランがいいわ」
というのも、です。
前日にガイドブックをみて入った、ミラノ老舗のレストラン。20席ほどの店内、なんとお客の100%が日本人というミラクルな光景がひろがっていたのです。
おもえば去年、夫(スイス人)と訪れた神戸牛のレストランでも、同じような体験をしました。あの時は逆に、日本人は私ひとり。ほかはすべて外国人でした。
そもそも観光地の有名店ってそういうものなのかもしれません。ハズしたくない。旅先ではとくに強くおもうもの。だからみんなガイドブックやレビューで評価の高い有名店に行くのです。
たくさんの人が「いい」と言っている有名店にはそれなりの理由があるのはたしか。おかげさまで、老舗レストランも、神戸牛も、かんじんな味のほうは満足のいくものだったのでした。
が、こと海外旅行の食事としては、異国情緒に欠けるという意味で、ちょっと残念な気持ちになったのも事実。
「どうせなら、地元のひとに混じって食事がしたい」
この母の言い分には、たぶんあの日、あのレストランでごいっしょした日本人のみなさん全員が、はげしく同意してくださることでしょう。
が、そんなお店を簡単にみつけられたら、ガイドブックはいりませんよね?何でもいいけど、イタリア人がいっぱいのレストラン、なーんて、母はさらりと言ってくれますが、けっこうむずかしい注文です。
その時、私たちはちょうどガレリアにいました。ずらりレストランがならんでいますが、あきらかに観光客むけの雰囲気がただよっています。
そもそも、ミラノ最大の観光スポットで、地元のひとが集うレストランをさがすなんて至難のわざなんですけど。。
ぶつぶついいながらも、母の期待にこたえようと律儀にさまよいつづける娘。きづけばスカラ座もとおりすぎ、ひっそり人影まばらな路地裏にでていたのでした。
*VIA DEI BOSSI スカラ座の裏通りです。
レストランはおろか、店らしきものもまばらな路地。
” Trulli Love ”
ひかえめに張り出された、ちいさなメニューに目がとまりました。パスタや前菜の軽めの単品メニューが数品ならんでいるだけの地味なものです。
なぁんだ。カフェに毛が生えたみたいなかんじかぁ。いったん歩きかけたときです。ふと、ガラス越しに窓際に座っていたお客さんと目があいました。
銀髪のロングボブがふんわり顔をつつみ、肩にファーのジャケットを優雅にはおった年配の女性。
ほほえんでくれたマダムの手には、赤ワインが注がれたグラス。その微笑みがすべてを物語っているようで。一瞬にしてゆったりと食事を楽しんでいる雰囲気が 伝わってきたのでした。
なんか、すっごくイタリアンマダムっぽくない?
おもわず、顔を見合わせる母と娘。
「ここにしよう!」
正直、空腹もMAXだったし、これ以上歩きたくない、というのもあって、そのお店にとびこむことにしたのでした。
カウンターのある一階は、シンプルで明るくて気取らないインテリア。私たちのほかには、さきほどのマダムご夫妻と、三人連れの男女が静かに会話しながら食事をたのしんでいました。
母はトマトソースのスパゲッティ、わたしはレモンクリームのタリオリーニ、それから赤ワインをグラスでいただきました。そしてデザートにはパンナコッタを。
これが、もうどうして。
どれもものすごくシンプルなのに、絶品!
これはただものじゃない気がして、帰宅してからしらべたところ「カフェに毛が生えた」などとは大変失礼だったことが判明。プーリア地方の料理をだすれっきとした”リストランテ”だったようです。
そして、ここが今回のポイントなのですが、、
まわりから聞こえてくる会話が、すべてイタリア語なことに大満足のようすの母でした。
路地裏に名店あり。
なんて言葉がありましたっけ?
ガイドブックやインターネットに頼らずに、みずからの嗅覚を研ぎ澄ませてさがしたレストラン。
それだけで、自分だけのスペシャルな名店になるような気がします。
TrulliLove • Dove il buono è di casa
(番外編) ミラノの晩餐*たべたもの覚え書き
その1:ミラノ風ふかふかピザ@スポンティーニ
ミラノのピザは生地がパンみたいに分厚くてふかふか、ときいて、有名店のスポンティーニへ。途中、道に迷っていると、他のレストランの客引きが、しつこくつきまとってくるのでこまりました。
「もうお店予約してあるから」といって撃退しようとしたら「道迷ってるなら、教えてあげる」とこれが意外にもしんせつな好青年なのです。
というわけで、他店の客引き君にエスコートされてご来店することになったスポンティーニなのですが、、、到着してみたらただの立ち食い&テイクアウトのファーストフード店。
予約もなにもあったもんじゃありません。マクドナルドに予約してある、って言ったようなものなのに、まじめに案内してくれるなんて。
なんていい人なんでしょう!
客引き君のお店にしとけばよかったかしらね、イケメンだったし、と母。さっきまでわたし以上に撃退モードだったのは母のほうなのですが。。
*スポンティーニは日本にもお店が。
その2:ビピンパ@HANA
連日、といってもたった2日ですが、イタリア料理を食べ続けていたら胃がもたれてしまったのは、母ではなく娘のほうでした。
ミラノ最後の夜だというのに、食べ物のことをかんがえただけで気持ちが悪い。胃薬をのんでしばらく横になり、やや回復して向かった先は、ホテルの近くにある韓国料理店です。
かけつけ一杯に注文した「ゆず茶」と、さっぱりビピンパ。つかれた胃袋にアジアの味がしみます。そしてハートにしみたのは、韓国人 スタッフの笑顔。やっぱりアジア人は落ち着くなぁ。。。
帰ったらNetflixで韓流ドラマをチェックしよう。
旅のおわり、ミラノの夜空を見上げ、 心はアジアを思う私なのでした。