くららの手帖

ローヌの岸辺暮らし、ときどき旅

「unpretentious」で、いいね!

土よう日。

朝、台所にいってみると、食べ物がないことにきがついた。

ちょうど天気もよかったので、歩きがてら湖まで朝ごはんを食べに行こうということになった。

湖までは、ローヌ川沿いに歩いて3,000歩ぐらい。

(最近、一日一万歩をめざし、iphoneの万歩計をセットしているのだ。)

f:id:sababienne:20180213221907j:plainサンデーブランチが大人気のBains des Paquisだけど、ふつうの日の、とくに冬の朝ごはんは空いていて静かだ。

f:id:sababienne:20180213221945j:plain映画「レイクハウス」でキアヌリーブスが住んでいたみたいな、湖の上に浮かんでいるような建物は、ながめも雰囲気もいい。

f:id:sababienne:20180213221918j:plain 注文はそとのカウンターで、給食みたいにおぼんをもらって、ならぶ。

タルティーヌ(バゲットに蜂蜜か、ジャムか、ヌッテラを塗ったもの)ふたきれに、フルーツサラダかミューズリ、フレッシュジュース、それにあたたかい飲み物がえらべて10フラン。

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「unpretentiousで(気どってなくて)いいね」

夫がいった。

食器はチープだし、セルフサービスでがちゃがちゃしてるし、とくに食材にこだわっているわけでもないし(少なくともそれをアピールはしていない)、メニューだって何の変哲もないものだ。

でも。

ジュースは、ちゃんとスロージューサーで生絞りだし、

バゲットは、なんちゃってじゃなく本物だし、

カフェオレも、フルーツも、ヌッテラもふつうにちゃんとしてる。

そう、気どってなくて、でもちゃんとしていて、いい感じなのだ。

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ところで。

おぼんを受けとり、席をさがしてウロウロしていたとき、

「おーい、久しぶりじゃないか!」

と、背後から呼びとめられた私たち。

ふりむくと、入り口ちかくのテーブルで、ナプキンを首元にさげたキャプテン・サンタみたいなおじいちゃんが、バゲット片手にニッコニコ笑って手をふっている。

captain santa

どうやら、夫の元同僚らしい。

ちかづいていって、握手し「お久しぶりです」とあいさつする夫。

すると、キャプテン・サンタはこういったのだった。

「あれ?名前なんだっけ?」

夫の背後で、おもわずズッコケそうになった私である。

自分から声をかけておいて、それってアリなのか!

ひとの名前が出てこなくて、きづかれぬようとりつくろうのに冷や汗をかいた、という話はよくきくし、身にも覚えがあるけれど。。

このキャプテン・サンタの無邪気さの前には、そんな悩みはふけば飛ぶほどのちっぽけな悩みなのだった。

なにか書くものはあるか、とあわてるキャプテン・サンタに、金色のハンドバッグをひっくり返してやっとみつけたペンをさしだす奥さん。

「あなた、これでいいかしら?」

ヒョウ柄の毛皮に、ショッキングピンクのとっくりセーター。

「奥さまは魔女」のサマンサをおばあちゃんにしたような、これまたキャラ立ちした奥さんだ。

「奥さまは魔女」よ、永遠に

「ここに名前と連絡先、書いてくれる?」

キャプテンがさしだしたのは、今しがた口元のヌッテラをぬぐった紙ナプキンである。 

あとで連絡するから、食事でもしようじゃないか、とキャプテン。

いいわね、いいわね、どこにしましょうか、ねぇ、あなた、とウィンクするサマンサおばあちゃん。

おもわずファンになってしまいそうな、かわいらしいご夫婦だ。

が、ざんねんながらキャプテンから連絡がくることはないだろうな、と思う私であった。

なぜなら、その紙ナプキンは、夫の名前とメールアドレスが記されたのち、ふたたびキャプテンの首元にさげられることとなったからである。

ようするに、この個人情報ナプキンが、自宅に持ちかえられるのかどうか?

それじたいが、はなはだあやしい状況なのだった。

となりの席をすすめられそうになるすんでのところで、それでは、とはるか遠くの席につき、カフェオレでほっと一息ついてからもしばらく、夫の顔には苦笑いがはりついてはがれずにいた。

「unpretentiousで、いいね!」

こんどは私が言った。

キャプテン&サマンサ夫妻のことである。

いつか、ひょっこりキャプテンから連絡が来るのを、ひそかに期待している私である。

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 *かわいいストーブのおかげで、室内はポカポカ。

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*これだけ並べるとARTです!チーズフォンデュ用のバーナー。

f:id:sababienne:20180213221954j:plain*気どりがないって、いいですね♪