くららの手帖

ローヌの岸辺暮らし、ときどき旅

暮らしは、アートだ:フランスの、田舎で、週末を(3)

朝。

フランスの、田舎の、朝。

パンの焼ける匂いがして、目が覚めた。

石壁に閉ざされた部屋はうす暗く、気づかなかったのだけれど、太陽はとっくの昔に顔をだし、そとは陽の光にみちていた。

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あわててとび起きて、洗面所で顔を洗う。水がキーンとつめたくて、二日酔いの頭がいっぱつでシャキッとした。

さえざえとした頭に、まずはじめに思い出されたこと。それは、ゆうべ「あのバスタブで、お風呂に入らなかったこと」だった。

あのバスタブ、というのは、大きな大きな「ブリキのたらい」である。

どれくらい大きいかというと、大人が4〜5人はいけそうな巨大さで、もともとは、牧場で牛に水をやる桶として使われていたものだ。

「目にした瞬間、このすばらしい用途がひらめいてしまった」

というジャッキーとジル。

いまでは牛が水を飲むかわりに、夜な夜な人間がお湯につかっている。

この光景を牛たちがみたら、はたしてどう思うだろう?

こんなアドベンチャラスなお風呂体験をみすみす逃すなんて!

眠気に負けて、シャワーで済ませてしまった昨夜のじぶんのことが、いまさらながら腹立たしくてならなかった。

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おもてに出ると、わたしの後悔などどこ吹く風の牛たちが草を食み、テラスのテーブルには、朝食の準備がととのっていた。

焼きたてのブリオッシュ、ゆで卵、ソーセージ。桃のスムージーに、ジャッキーお手製のレッドカラントのジャム。それから、Faisselle(水切りかご)という名前のシェーブル・チーズ。

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