くららの手帖

ローヌの岸辺暮らし、ときどき旅

2024-01-01から1年間の記事一覧

サプライズだよ、ハニー♪

あれは十二月もなかばの、ジュネーブには珍しくまとまった雨が降った日の夕方のこと。歯医者の帰りみちに「寄りたい店がある」とRがいうので、わたしたちは中央駅近くのその店を訪ねたのだった。 「あ、ここだ」 雨粒に叩かれぼぅっと青白く光るその店のショ…

フェミナの青い箱

フェミナ(FÉMINA)という、青い箱に入ったチョコレートがある。スイスのチョコレートブランド・カイエ(CAILLER)のもので、ちょっとずつちがう味のプラリネが詰めあわされている。専門店でしか買えないような、ひと粒がショートケーキぐらいするチョコレートに…

ホフマンの手と、森と金貨と。

義兄のクリストフが、ランチに仔牛のパイ包みを焼いてくれた。切りわけるクリストフのがっしり肉厚な手をみていて思いだしたのは「ホフマンの手」だ。 フェリックス・ホフマンは、わたしが幼いころボロボロになるまで読んだ(かずかずの)絵本の作者である。…

雪の朝のうずうず

朝、起きてみると、外は一面の雪。アパートの庭も、川沿いの木々の枝も、向こう岸の建物の屋根も。街じゅうがふわりと真っ白な綿布団をかぶっていた。 まだうす暗いアパートの広場には、だれの足跡もついていない。ふわり、ふわり。降るというよりは、宙を舞…

かつお節だよ人生は

生まれてはじめて、昆布とかつお節から出汁をひいた。なんて、新年早々、母がきいたら卒倒するかもしれない衝撃的な告白ではあるけれど、事実なのだから仕方がない。きっかけは、知り合いのドイツ人・マルチンさん。秋に北海道に行くといったら「昆布とかつ…