くららの手帖

ローヌの岸辺暮らし、ときどき旅

2022-01-01から1年間の記事一覧

インク壺の淵にて

こんにちは。 暑い日がつづきますが、いかがおすごしでしょうか? わたしはいま、インク壺の淵に佇んでいます。 「インク沼」というものの底知れぬ恐ろしさは「はまったら最後、ぬけだせない」。つねづねそう聞かされてきました。ですから去年、万年筆を手に…

変わっちまったな

朝。いつもは静かなローヌの岸辺に、レジャーシートのお花畑ができていた。こんな朝早くに、なにごとだろう? あわててメガネをかけてみると、シートの上には何やらごちゃごちゃ品物がならべてある。町内のヴィッド・グルニエ(vide-grenier)が、開かれてい…

サムシング・レッド

お祝いごとがあると、その本人が周りにケーキやお酒をふるまう。誕生日の本人が、職場や学校にケーキを持っていくなんておもしろいな。日本ではあまりみられない習慣に、さいしょは「へぇ」と思った。 でもあるとき、バースディ・ケーキを配っていたクラスメ…

ベトナムちまきと、マダム。

この季節になると、楽しみにしているたべものがある。 ベトナムの人たちが旧正月に食べる、ちまきだ。甘辛く煮た豚と卵の黄身を、もち米でくるんだものを、バナナの葉で包んで蒸してあるこのちまきは、一年のうちでもこの時期にしか売っていない。 じつは一…

沁みるレモンティー、あるいは暴力的なコーヒー。

起きたらまず、マグカップにレモンジンジャーティーを作り、朝ドラを観ながらゆっくり飲む。それから、朝ごはんにはコーヒー。読書には、日本茶か紅茶。夕食後にはまたコーヒー……と、お茶やコーヒーは日々の暮らしに欠かせない。ごくまれにコーヒーを豆から…

おじいさんと犬

冬は、油断大敵だ。 午後もおそくなってから散歩にでると、とちゅうで日が暮れてしまう。 寒いし、暗いし、日のあるうちに散歩はすませよう。そう肝に銘じているのに、あっと気づいたときにはもう遅い。太陽は、西にかたむいている。 いつもより遠くまで足を…