くららの手帖

ローヌの岸辺暮らし、ときどき旅

2018-01-01から1年間の記事一覧

ハイテク切手と、クリスマス。

クリスマスカードを出そうとしたら、案のじょう、買いおきしてあるはずの切手が、どこにもみあたらない。 なんだか、毎年、おなじことを繰りかえしているような気がするのは、思いすごしだろうか? それはともかく。。 クリスマス直前の郵便局なんて、大混雑…

93才のバースデー・ブランチ

義母が、93才になった。 誕生日には、家族みんなであつまって、お祝いするのが恒例なのだが、それをだれが企画するのかといえば、義母がみずから仕切るのである。 それこそもう、場所選びから出欠とりにいたるまで、いっさいがっさい。 ことしはちょっと趣向…

オトコたちの失言

午後から吹きはじめた北からの風が、街じゅうを黄金色にかがやかせていた、葉っぱの雨を降らせている。 はらり、くるり、ひらり。 葉っぱは、ワルツを踊るみたいに、弧をいくつも描きながら宙を舞って、さいごにフワリと着地する。 かさり、こそり、ぱさり。…

上を向いて歩こう ♪:永住権をいただきに、ニューヨーク(4)

「上ばっかりみて歩いて、穴に落っこちないように」 わたしがニューヨークに行く、というと、母はそういった。 そういわれて、10才ぐらいのとき、母と妹と三人で、はとバスに乗ったことを思い出した。 あれは、新宿の副都心、だったとおもう。 ビルをみあげ…

地に足つけて、家事を:永住権をいただきに、ニューヨーク(3)

ニューヨーク。 それは世界一、家事のアウトソーシングがすすんでいる場所だ。 メイドが雇えるようなお金持ちだけではなく、一般的なサラリーマンの家庭でも、外部のサービスを積極的に利用している。 たとえば、ごくごくふつうのサラリーマンであるstep son…

ドロータはどこ?:永住権をいただきに、ニューヨーク(2)

ニューヨークでは、step son(継息子)のPくんが、独身のときに住んでいたアパートに滞在している。 去年、PくんはフィアンセのMちゃんと家を買った。 だからかれこれ一年以上、このアパートには誰も住んでいないのだけど、Pくんは賃貸にもださず、そのまま…

みどり色のドレスをきた女の子:永住権をいただきに、ニューヨーク(1)

ワオ!おめでとう!ようこそアメリカへ! ちょっと芝居がかった、大げさな調子でそういうと、口ひげをたくわえたその入国審査官は、差し出したわたしの”移民ビザ”に、ポンッといきおいよく、スタンプをおしてくれた。 事務的なやりとりが、淡々と無表情にく…

ロンドン、お茶の時間

巨大なスカラベに、猫のミイラ。古代文字に、ギリシャのつぼ。トルコ石がびっしりちりばめられた魔除けのブローチ。 おもちゃ箱をひっくり返したような、古今東西のお宝の数々を、朝からぶっとおしで拝見していたせいか、頭の奥がズーンと重い。 どうやら、…

HOME

一滴の雨も降らない、かんかん照りが二週間ほどつづき、湖の花火大会が終わるころになると、こんどは夕立ちとかみなりが毎夕やってくる。 雨は、ひと夏ぶんの熱をはらんだ地面や、屋根や、木々や、空気や、人々の日焼けした肌に降り注ぐ。 一日、また一日と…

夏の終わりの、選手交代。

だしてあったクリーニングをとりにいった。 入り口で声をかけるとしばらくして、パステルカラーのシャツの森から顔をのぞかせたのは、いつものなじみの店員さんだった。 あ。 選手交代。 彼女のトースト色に日焼けした顔は、夏がおわり、街が「通常オペレー…

だれのものでもないわが道:フランスの、田舎で、週末を(4)

朝ごはんのあと、でかけた散歩の途中、「売り家」の札がかかった家をみつけた。 ひとの気配が消えて久しいのだろう。 そこだけ時間が止まってしまったような、しずかな空気を全身にまとって、その家はひっそりと佇んでいた。 「私たちの家も、ちょうどこの辺…

暮らしは、アートだ:フランスの、田舎で、週末を(3)

朝。 フランスの、田舎の、朝。 パンの焼ける匂いがして、目が覚めた。 石壁に閉ざされた部屋はうす暗く、気づかなかったのだけれど、太陽はとっくの昔に顔をだし、そとは陽の光にみちていた。 あわててとび起きて、洗面所で顔を洗う。水がキーンとつめたく…

バラ色の台所:フランスの、田舎で、週末を(2)

靴をみれば、性格がわかる 歯をみれば、育ちがわかる 手をみれば、女性の年齢がわかるのだとか。 そして、文章を読めば、人柄がわかるのだとも。 みせるつもりがなくても、人となりというものは、知らずにじみ出てしまうのだから、おそろしい。 台所も、その…

”Middle of Nowhere”からの招待状:フランスの、田舎で、週末を(1)

こんどの週末、田舎の家で、いっしょに過ごさない? フランス人の友人カップルから、招待状をうけとった。 フランスの、 田舎で、 週末を。 この言葉のひびきだけでもう、うっとり、とろけてしまいそうな私である。 ここ数日など、あんまり楽しみで、なんど…

ハトとワシ。

近所に住む、JさんとNさん夫婦のアパートに遊びにいった。 少女のようにかわいいNさんは、植物を育てる天才。 アパートは、いつ訪ねても草花がいきいきと繁茂し、E.T.をむかえにきたあの宇宙船のようである。 いっぽう、夫のJさんは、温厚な見た目からは想像…

あこがれの、熟練シュフ。

朝ごはんに、黄桃をきって食べた。 ちょっと甘みがとおかったけれど、シャキッとした歯ごたえとどうじに、甘酸っぱさが口いっぱいにひろがって、目が覚めるようだった。 夏。 スーパーマーケットに買い物にでかけるのが、ちょっと楽しくなる。 白いの、黄色…

キャンドルの木

「キャンドルの木」と呼んでいる木があります。 枝のさきっぽから、円すい形の白い花が、空にむかっていっせいに咲くと、それはまるで、おおきな燭台にたてた、無数のキャンドルに、灯がともったようにみえるのです。 6年前のちょうどゴールデンウィークに…

身におぼえ、あってもなくても。

「マダムsabaは、ご在宅でしょうか?」 朝8時きっかりにかかってきた、一本の電話。 ”深夜早朝の電話に、よいしらせなし”とはいうけれど、まさにそれは、借金とりからの電話でした。 「12月にご利用の、60フラン(約七千円)のお支払いが、おすみでないよう…

クスクスを、ボナペティ。

レラは、わたしの「クスクスの先生」だ。 はじめて会ったとき。 レラがモロッコ出身ときいて、わたしが「クスクスが大好きだ」と猛アピールしたのが、そもそものことのはじまりだ。 ほどなくして、クスクス鍋と、オリーブの木鉢と、おタマと、スパイスをかつ…

ホワイトデーのサプライズ?

世の中には、サプライズが好きなひともいれば、嫌いなひともいる。 すべての嗜好は、個人の自由だ、とおもう。 もんだいは、サプライズする人が「するか・しないか」を選べるのにたいし、される側にはまったく選択の余地が与えられていない、ということだ。 …

片思いのリモージュ

ひさびさに、恋に落ちてしまいました♩ 年にいちどの、カルージュのアンティークフェア。 ジュネーブに移り住んでから、ほぼ毎年のぞいているこの骨董市で、かならず立ちよるお店があります。 洗練されつつ、どこかあたたかみのある品々は、店主のカトリーヌ…

変人映画・愛。

変わってる人ですね、っていうのは、ほめ言葉じゃないかも。 そう気づいたのはもうだいぶいい大人になってからだ。 ユニークな人、とか、おもしろい人、とか。 いい意味が含まれている場合ももちろんあるけれど。 むしろ「こまった人ですね」とか「つきあい…

ちびまる子、でいられた日々。

実家でさがしものをしていたら、小五の日記がでてきた。 まず、字が汚くてびっくり。 それから漢字の少ないことにあきれてしまった。 が、読んでみると、これがなかなかおもしろい。 子どもらしいすなおな日記だなぁ、と思って油断していると、ひやっとする…

「unpretentious」で、いいね!

土よう日。 朝、台所にいってみると、食べ物がないことにきがついた。 ちょうど天気もよかったので、歩きがてら湖まで朝ごはんを食べに行こうということになった。 湖までは、ローヌ川沿いに歩いて3,000歩ぐらい。 (最近、一日一万歩をめざし、iphoneの万歩…

終のすみか、ではなく。

ドイツ人の友人夫妻ミハエルとサラが、「リタイア後の家を、ついに見つけた!」というニュースをもって、遊びにきてくれた。 ジュネーブには、かれこれ30年以上暮らしているふたり。 ミハエルが去年リタイアして、家を探しているとはつねづね聞いていたのだ…