くららの手帖

ローヌの岸辺暮らし、ときどき旅

恐るべし、スイスアルプス:クランモンタナ 山日記〈後編〉

朝方、かちゃり、とドアの閉まる音がして目が覚めた。隣に目をやると、ベッドはもぬけの殻だった。遮光カーテンのすきまからは細くひとすじだけ、朝の光が射しこんでいる。ぼんやりした頭で考えるうち、Rが昨夜「朝、パン屋に行く」といっていたのを思い出し…

道しるべ、いろいろ。:クランモンタナ 山日記〈前編〉

駐車場をぬけると、車道にでた。ごぉーっとうなるようにエンジン音をひびかせ、砂を積んだダンプカーが、リュックを背に歩くわたしたちを追い抜いてゆく。休業して久しい様子の不動産屋の軒先に、朽ちかけた木のベンチをみつけ、わたしたちはサンドイッチを…

雲の上の、常連カフェ。スキーバカンス@ サース・アルマゲル

ことしのジュネーブの冬は、晴れの日が多くて暖かくて、なんだか冬じゃないみたいな冬だった。 霧がたちこめ、何週間もどんより曇り空に閉じ込められる、あのジュネーブの灰色の冬がやってこなかった。 だから、毎年二月、三月ともなると、太陽と青い空に恋…

レーティッシュ鉄道の車窓から、鉄子の血がさわぐ。山岳リゾート・アローザですごすスイスの秋(10)

トラブルというのは、いつだって「よりによって」という時と場所でおきるモノである。 アローザでの一週間のトレッキングウィークも最終日。帰宅の途についた私たちの車のエンジンが停止したのは、スイス西端にある自宅から450kmはなれた、スイス東端の山中…

ワルサーさんの同窓会。山岳リゾート・アローザですごすスイスの秋(9)

朝、ホテルのロビーで、民族衣装をきたこどもたちとすれちがった。あまりにかわいらしくて目をうばわれていると、フロントの男性が言った。 「きょうは、アローザでワルサーの同窓会があるんですよ」 ワルサー?耳慣れないことばにとまどっていると、 「じつ…

見た目にだまされた、ゴージャスな一日。山岳リゾート・アローザですごすスイスの秋(8)

人は見ためによらずというけれど、山は登ってみなければわからない。 Setaという小山にはすっかりだまされた。 この日歩いたのは、Langwies(1377m)からBlackter Fürggli (2141m)まで、800m登って800mくだる、10kmを4時間かけてあるくというコース。 La…

雲のうえには何がある?山岳リゾート・アローザですごすスイスの秋(7)

今日はヴァイスホルン(Weisshorn)山頂の展望台に行ってみようという。 空はぶあつい雲におおわれ、山はたちこめる霧につつまれているというのにだ。 こんな日に展望台?と顔に書いてあるわたしをみて、夫がいった。 「雲がひくいから、きっと山頂は快晴だ…

マーモットクリームに、バンビステーキ?山岳リゾート・アローザですごすスイスの秋(6)

トレッキングメンバーのひとり、モントレーは動物さがしの名人だ。 「あ、あそこ」 小さくささやき、モントレーが立ち止まると、その視線のさきに動物がいる。それはまるで魔法か手品をみているかのようで、わたしは動物がみたくていつもモントレーにぴった…

干し草ベッドの非情なる現実。山岳リゾート・アローザですごすスイスの秋(5)

「グリュッツィ」(こんにちは) ひときわ古くて美しい民家。窓辺のゼラニウムに目をうばわれ、写真をとっていたら、玄関からおかっぱ頭の女性が顔をのぞかせ声をかけてくれた。 「まだやってますよ、よかったらどうぞ」 ひとなつこい笑顔につられて、おじゃ…

ハダカのおつきあい、にカルチャーショック。山岳リゾート・アローザですごすスイスの秋(4)

郷に入れば郷にしたがえ、とはいうけれども、サウナに入れば全裸になれ、という地元ルールには、さすがの私もいっしゅんひるんでしまった。 ホテルクルムアローザには、谷に面して全面ガラス張りのステキなスパエリアがある。上階にジャグジーもそなえた大き…

アルプスの少女(?)ミリアムの山小屋。山岳リゾート・アローザですごすスイスの秋(3)

アローザの谷をへだてて反対側に、ミリアムの山小屋はある。 「ちょうど、アプリコットケーキが焼きあがるわよ」 注文をとりにきたミリアムがいう。あまくてこうばしい香りがキッチンから漂ってくるのにきづくと、きゅうにお腹が空いてきた。 お茶のじかんと…

神秘的な雨の森で癒しのウォーキング&毒キノコ狩り。山岳リゾート・アローザですごすスイスの秋(2)

翌朝、目を覚ますと、そとは雨が降っていた。天気予報によると、最高気温6℃、最低1℃らしい。雲なのか霧なのか境目のはっきりしないもやの中に、向こう側に見えるはずの山もかすんでみえない。 こりゃ、今日はトレッキングはキャンセルかな?ホテルで1日のん…

名物トレッキングガイド・ハンスとの再会。山岳リゾート・アローザですごすスイスの秋(1)

9月末は、スイスの夏が終わりをつげる季節だ。夏のあいだフル回転で営業してきた山岳リゾートのホテルも、冬のスキーシーズンまでいったん店じまいするところが多い。 9月下旬になると、つめたい雨とともにストンと気温がさがり、空気がすっかり入れ替わった…

アメリカンなぽっちゃり姉妹とモンブラン(ケーキじゃなくて山のほう)

その姿を見ると、縁起がいいような、ラッキーなような、思わずしあわせな気分になってしまう山といえば、日本では富士山だったが、スイスにきてからはモンブランである。 ジュネーブからレマン湖をはさんだフランス領、80kmの距離にあるモンブラン。天気が…

スイスの秘境でスキーバケーション(5) 中世から湧きつづける温泉にて土地のパワーをいただく

Scuolとその周辺は、湧き水の源泉があちこちにあって、古くからミネラルウォーターと温泉で有名だ。いまでも公共の源泉からは第一級のミネラルウォーターが村に供給されている。 じっさい歩いていると、道端から水が湧いているのをみることができる。泉のま…

スイスの秘境でスキーバケーション(4)スキーをしない一日。ときには目的を忘れて横道にそれてみる。

ときどき、私はスキーしないからスキーリゾートには行かない、というひとがいるけれど、もったいないなぁと思う。雪のアルプスは、夏に匹敵するくらい美しいし、スキー以外にもいろいろ楽しめるのに。 これがハワイだったら、私はサーフィンしないからハワイ…

スイスの秘境でスキーバケーション(3)おいしい空気とシンプル山ごはんでヘルシーに

スキーで楽しみなのはランチであり、休けいである。 どこまでもひろがる青空の下、360度つらなるアルプスをながめながらいただく自家製のホットチョコレート。スキーでひと汗をかいたあと、太陽の光をさんさんと浴びながら飲むつめたいビール‥。もしかしたら…

スイスの秘境でスキーバケーション(2)標高3,000メートル級のスキー場にて恩師のことばをかみしめる

ホテルを出て右に折れるとすぐに村の広場にでる。スキー場にはこの広場からバスに乗って向かうのだ。 広場の中央にある水くみ場で、お手伝いを頼まれたのか男の子がバケツに水をくんでいる。もう昼近くだからか、バスを待っているのは私たちのほかに二組だけ…

スイスの秘境でスキーバケーション(1)エンガディンの小さな村Scuolの可愛いホテル

今日はスキーバケーションの話をすこし。 スイスは、山だらけの国だけあって、気軽に日帰りでスキーが楽しめる。 なので、スキーだけのためにとくに休暇をとる必要はないんでは?と思うのだけれど、みんなシーズン中にすくなくとも1週間程度のスキーバケーシ…