朝ごはんのあと、でかけた散歩の途中、「売り家」の札がかかった家をみつけた。
ひとの気配が消えて久しいのだろう。
そこだけ時間が止まってしまったような、しずかな空気を全身にまとって、その家はひっそりと佇んでいた。
「私たちの家も、ちょうどこの辺りをサイクリングしているときに、ぐうぜん見つけたのよ」
とジャッキー。
「ただし、”売り家”の看板がでていたワケじゃないから、話は長くなるんだけど」
そう前置きして、語ってくれたのは、山あり、谷あり、人情ありの、映画が一本撮れてしまいそうにドラマティックな物語だった。
「すてきな家だなってね。遠目にみた瞬間ピンときたの」
自転車を降りて、家のまわりをぐるりと歩いてみた。
窓にカーテンこそ掛かっているけれど、人が生活している気配がぜんぜんなくて、空き家のようだった。
そう、ちょうど、この家のように。
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