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スイスのくらし、旅のエッセイ、日々のできごと、おもうこと。

向日葵通り一丁目。いま此処で、この人と

T・o・u・r・n・e・s・o・l・s…

カーナビに、住所をうちこむ、手が止まる。

向日葵(ひまわり)通り一丁目!

夕ごはんに誘ってくれたその友だちが、こんなかわいい名前の通りに住んでいたとは、今までまったく気づいていなかったのだった。

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ジュラ山脈の麓にひろがる、向日葵畑をぬうようにしてたどり着くと、ドアベルを鳴らすまでもなく、裏庭の巨大なセコイヤの木が落とす木陰の下に、テーブルを囲むなつかしい顔がならんでいた。

じつをいうと、外出制限が解除されてから、こうして人と集まるのははじめて。じつをいうと、外出制限がはじまる前、さいごに集まったのもこのメンバー。さらにじつをいうと、その集まりのあと参加したメンバーにコロナ陽性が発覚して、全員が自宅隔離になって以来、四ヶ月ぶりの再会だったから、感慨もひとしおだった。

「三密を避けようと思って」と、急きょ庭に設えられたダイニングは、イスとイスのあいだに大きくスペースをとってある。もしかしたら、すでに全員免疫があったりするのかもしれないけれど、念のため握手もハグもビズもなし。それでも一時は重症化を心配して、連絡をとりあった全員が、こうして元気に再会できたことがうれしい。

そのみんなの「うれしい」が伝染したのか。

みんなの間をせっせと駆けまわり、ソーシャルディスタンスをぐっとちぢめてくれたのは、リヨンからやってきたばかりの子犬のテオくんだった。

向日葵、友だちの笑顔、子犬。

まったくみるだけで、パワーをもらえるものたちには、圧倒されてしまう。

この四ヶ月、失なわれていたものを、いっきに挽回できそうな気がした。

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やがて両手に鍋つかみをはめた、Lさんが運んできてくれたのは、アペリティフの「さつまいものピュレにナッツをまぜてパイで包んで焼いたもの」。手際よく切り分けると、鮮やかなオレンジ色の切り口から、ホクホクと湯気があがる。ぽってりやわらかな深みどりのお皿に、藍地に白い小花模様が清々しいバーレイのブルーキャリコの小皿を重ねた、銘々皿にとりわけてくれた。

前菜は、おそろいの深みどりの大皿に、赤・みどり・黄色の彩りゆたかなトマトとモッツァレラチーズとバジルを重ね、シンプルにバルサミコとオリーブオイル、塩をかけたカプレーゼ。

メインは、庭でおこした直火でじっくりグリルしたラム肉に、ズッキーニとポテトを添えたものが、やはり深みどりのお皿とバーレイのブルーキャリコのディナープレートを重ねたものにサーブされた。

テーブルの中央におかれた、向日葵色のキャンドルの灯りが夜風にゆれるのを眺めながら、キンキンに冷えたロゼワインのグラスをかたむける……と、ここでいつもだったら、写真を撮りたくなるところだけれど、やめておいた。

なぜだか、そんな気分になれなかったのだ。

いま此処で、この人たちと、この時間を過ごすこと。そのありがたみを、思い知らされたあとだったからなのか。写真に撮ってあとで眺めることより、いま此処でこの人たちとすごしている、そのことに集中したいとおもったのだ。

そのかわり家に帰ってから、印象に残ったおもてなしのテーブルセッティングを、メモ代わりにスケッチしておくことにしたわたし。

めいっぱい遊んでくれたテオくんと、玄関先の紫陽花も…、なぁんて横っちょに描きたしていくうち、なんだか自分だけのものにしておくのは惜しくなってしまった。

料理上手なLさんと、ユーモアあふれるRさんと、エネルギーに満ち満ちたテオくんが住む、向日葵通り一丁目へ。

お礼のメールがわりに、送ってみようか?

そんな迷案が、ひらめいた。

Lさん&Rさんの苦笑いが、目に浮かぶようだけど。

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*Art SetというiPad用の無料アプリで、ひとさし指一本で描いたイラスト。デジタルの落書きは、ステイホーム中にハマってしまったことのひとつです♪