くららの手帖

ローヌの岸辺暮らし、ときどき旅

たべもの

フェミナの青い箱

フェミナ(FÉMINA)という、青い箱に入ったチョコレートがある。スイスのチョコレートブランド・カイエ(CAILLER)のもので、ちょっとずつちがう味のプラリネが詰めあわされている。専門店でしか買えないような、ひと粒がショートケーキぐらいするチョコレートに…

夜はどの猫も灰色

友人のCさんが、女どうしの乾杯にピッタリなワインをもってアペロに来てくれた。猫のイラストがかわいいこのロゼワインの名前は、« La nuit, tous les chats sont gris »。 《夜はどの猫も灰色》というフランスのことわざで、意味は「夜は暗くてよく見えない…

ぜんさいのあじ

再婚して十年。合わない部分も多々ある中、これだけは合っていて良かったと思うのは、食の好みだ。中でも二人そろって好きなのは、タイ料理。パッタイなどの定番に加え、タイに駐在していたことのある夫は、地方の郷土料理にもくわしい。ちょうどその日も「…

変わっちまったな

朝。いつもは静かなローヌの岸辺に、レジャーシートのお花畑ができていた。こんな朝早くに、なにごとだろう? あわててメガネをかけてみると、シートの上には何やらごちゃごちゃ品物がならべてある。町内のヴィッド・グルニエ(vide-grenier)が、開かれてい…

サムシング・レッド

お祝いごとがあると、その本人が周りにケーキやお酒をふるまう。誕生日の本人が、職場や学校にケーキを持っていくなんておもしろいな。日本ではあまりみられない習慣に、さいしょは「へぇ」と思った。 でもあるとき、バースディ・ケーキを配っていたクラスメ…

ベトナムちまきと、マダム。

この季節になると、楽しみにしているたべものがある。 ベトナムの人たちが旧正月に食べる、ちまきだ。甘辛く煮た豚と卵の黄身を、もち米でくるんだものを、バナナの葉で包んで蒸してあるこのちまきは、一年のうちでもこの時期にしか売っていない。 じつは一…

沁みるレモンティー、あるいは暴力的なコーヒー。

起きたらまず、マグカップにレモンジンジャーティーを作り、朝ドラを観ながらゆっくり飲む。それから、朝ごはんにはコーヒー。読書には、日本茶か紅茶。夕食後にはまたコーヒー……と、お茶やコーヒーは日々の暮らしに欠かせない。ごくまれにコーヒーを豆から…

失われしパンと猫

郵便物をとりにアパートのエントランス・ホールに降りてゆくと、掲示板の前で管理人のサントス氏が仁王立ちしているところだった。その視線の先にあるものは、みなくてもわかった。中央に猫の写真が印刷された貼り紙である。この貼り紙にはわたしも、数日前…

ウィーン風カツレツの、かくし味

「仔牛肉を二枚。シュニッツェル用に、薄くスライスしてください」 顔のまえに二本指を立ててお願いすると、肉屋のご主人が「うむ」とうなずき、仔牛肉の塊をケースから取りだす。 「2kgですね?」 大きな塊の半分ぐらいのところに、包丁を当ててみせるご主…

そんな、バナナ話

夫は、毎朝バナナを食べる。 お米やパンが切れても平気なくせに、バナナが切れるとあわててスーパーに買いに走る。 夫の体の5%ぐらいはバナナでできているのではないか?とわたしは怪しんでいるのだけれど、世の中に「バナナ依存症」というものがあるとした…

シェパーズ・パイ教室、いつまでも学びたい大人たち。

かつて働いていたころ、ご褒美ランチの筆頭だった、パブランチ。 値段が高いか、カロリーが高いか。 ご褒美ランチのリストには、そのどちらかの理由で、ふだんなかなか足を運べないレストランの名前がならんでいた。 パブランチは、もちろん、「カロリー」の…

サイン入りのフランスパンと、ぶどう畑の休日。

週末、ラヴォーのぶどう畑を歩いた。 レマン湖畔の町キュリーの船着場から、ハイキングの黄色い目印をたどっていくと、湖からゆるやかに登っていく斜面には、いちめんにふるい石垣に区切られたぶどう畑がはりついている。 ワイン造りのためのぶどうの収穫は…

CAREにはじまり、CAREに終わる。ロンドン、ジュリアナズ・キッチンのアフタヌーンティ

ロンドン郊外。 地下鉄を、セントジョンズウッドの駅で降り、地図をたよりに道をたどっていくと、すぐにあたりは閑静な住宅街になる。 イギリスらしい、古くてかわいい家がならぶ通りを、行きつ戻りつしていると、屋根を修理中の職人さんが、ハシゴをおりて…

花より、クレープ:パリ、ジャポニスムひとり旅(1)

いけばなを習いはじめたのは、スイスに移り住んでまもなくのこと。 かれこれ6年になる。 じつは日本にいたころは、英国式のフラワーアレンジにハマっていた。 よくある話だけれど、海外にでてみてあらためて、和の文化に開眼したパターンだ。 でも、それも…

ロンドン、お茶の時間

巨大なスカラベに、猫のミイラ。古代文字に、ギリシャのつぼ。トルコ石がびっしりちりばめられた魔除けのブローチ。 おもちゃ箱をひっくり返したような、古今東西のお宝の数々を、朝からぶっとおしで拝見していたせいか、頭の奥がズーンと重い。 どうやら、…

だれのものでもないわが道:フランスの、田舎で、週末を(4)

朝ごはんのあと、でかけた散歩の途中、「売り家」の札がかかった家をみつけた。 ひとの気配が消えて久しいのだろう。 そこだけ時間が止まってしまったような、しずかな空気を全身にまとって、その家はひっそりと佇んでいた。 「私たちの家も、ちょうどこの辺…

暮らしは、アートだ:フランスの、田舎で、週末を(3)

朝。 フランスの、田舎の、朝。 パンの焼ける匂いがして、目が覚めた。 石壁に閉ざされた部屋はうす暗く、気づかなかったのだけれど、太陽はとっくの昔に顔をだし、そとは陽の光にみちていた。 あわててとび起きて、洗面所で顔を洗う。水がキーンとつめたく…

バラ色の台所:フランスの、田舎で、週末を(2)

靴をみれば、性格がわかる 歯をみれば、育ちがわかる 手をみれば、女性の年齢がわかるのだとか。 そして、文章を読めば、人柄がわかるのだとも。 みせるつもりがなくても、人となりというものは、知らずにじみ出てしまうのだから、おそろしい。 台所も、その…

”Middle of Nowhere”からの招待状:フランスの、田舎で、週末を(1)

こんどの週末、田舎の家で、いっしょに過ごさない? フランス人の友人カップルから、招待状をうけとった。 フランスの、 田舎で、 週末を。 この言葉のひびきだけでもう、うっとり、とろけてしまいそうな私である。 ここ数日など、あんまり楽しみで、なんど…

あこがれの、熟練シュフ。

朝ごはんに、黄桃をきって食べた。 ちょっと甘みがとおかったけれど、シャキッとした歯ごたえとどうじに、甘酸っぱさが口いっぱいにひろがって、目が覚めるようだった。 夏。 スーパーマーケットに買い物にでかけるのが、ちょっと楽しくなる。 白いの、黄色…

クスクスを、ボナペティ。

レラは、わたしの「クスクスの先生」だ。 はじめて会ったとき。 レラがモロッコ出身ときいて、わたしが「クスクスが大好きだ」と猛アピールしたのが、そもそものことのはじまりだ。 ほどなくして、クスクス鍋と、オリーブの木鉢と、おタマと、スパイスをかつ…

「unpretentious」で、いいね!

土よう日。 朝、台所にいってみると、食べ物がないことにきがついた。 ちょうど天気もよかったので、歩きがてら湖まで朝ごはんを食べに行こうということになった。 湖までは、ローヌ川沿いに歩いて3,000歩ぐらい。 (最近、一日一万歩をめざし、iphoneの万歩…

ジコシュチョーに、胃もたれ。

ジュネーブの冬といえば「霧」。 アパートの下を流れるローヌ川も、冬の朝は、濃いミルク色をした霧のスープの底深くにしずんでしまいます。 町中がすっぽり冷蔵庫に入れられたみたいなこんな日は、きまって煮込み料理がたべたくなります。 などと思っていた…

アントネッラさんの、路地裏オステリア。ヴェネツィア、つかの間アパート暮らし

夏の終わりのヴェネツィアは、アメリカ人観光客だらけ。 経済的に幅を利かせていいはずのアジア系や、地理的に有利なはずのヨーロッパ系は、いったいどこ? そう首をかしげたくなるほど、聞こえてくるのはアメリカ英語ばかりである。 アメリカ英語が苦手なの…

「マルシェ」ではじめる日曜日

日曜日。ちょっと早起きして、フランス領Divonneのマルシェ(朝市)へ。日本の母からのおつかいで、頼まれたものを買いにきました。 めざすはピンクのテント、Cookme ! https://www.cookme-shop.com グルメの都リヨンにあるスパイス・お茶の専門店です。

モルジュの休日

何もしないですごす休日が、一番ぜいたく。 わたしの周りのスイス人は口をそろえてそう言います。 しずかに本を読んですごす、とか ゆっくり料理をする、とか 一日中ぼーっと景色をながめてすごす、とか ただ近所を散歩する、とか。 でも私、この「何もしな…

ベルン、とある冬の日曜日の風景。未知なるスイスをもとめて。

二泊三日の母娘ミラノショートトリップ。せっかくなので帰り道はベルンで途中下車することにしました。 せっかくスイスの娘をたずねてきたのに、スイスを全く観光しないのもナンですし。 しかし、冬のオフシーズン、しかも日曜日、という二重苦のベルンです…

ミラノで発見!路地裏リストランテ。ガイドブックに頼らないレストランさがし

母がどうしても見たい!というので、予約して朝イチで見にいった「最後の晩餐」。 「人生の最後になにを食べたいか?」 そうきかれると、おあそびと承知の上でも、妙に真剣にかんがえてしまうのはなぜでしょう? 同様に「旅先で何を食べるか?」というのも、…